【映画予告編感想】2026/4/3週公開

4/3(金)週公開の映画予告編を紹介していく。

前回分が12/19週公開で、それ以降忙しく予告編感想が途絶えてしまったが、2026年度という新たな契機でまた続けていきたい。だがなかなか時間が取れずどうしたものか。大したことを書いているわけではないのだが、記事を書き上げるのに実は4時間近く書けているのだ…。

 

 

 

4/3(金)公開作品

ザ・ブライド!

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ティザー予告がまず最高、本予告も最高、という最高づくしの予告編。マギー・ギレンホール監督の2作目という大作映画ながら理想的な予告だった。ティザー予告で最初に出てくる白黒の口元、そして最後の、容器に入れられた頭部。『フランケンシュタイン』が題材ということもあり、とにかく映画自体の素材がすごくゴシックで映えるものになっているのだろう。ティザーは段々アップテンポになる音楽に乗って凄まじい速さで場面が切り替わり、切り替わる度に画面が暗くなる。たった2分少しで徐々に心を掻き立ててくれる構成が見事。本予告ではフローレンス・アンド・ザ・マシーンの『Everybody Scream』という曲が使われており、これまたタイトルもメロディも狂気を感じることのできる力作。映画主題歌だという情報は出ていないし、そもそも去年の10月に発表された曲のようなのだが、劇中でかかることはあるのだろうか。そしてどちらの予告でもタイトルやキャスト名を出す場面で、オリジナリティ溢れる背景が使われている。モノクロの背景に黒い液体が徐々に沁みていく薄気味悪さは、映像に被せて受賞した賞の名前や主演俳優の名前をデカデカと出すありふれた予告編とは一味も二味も違い、この独創性だけで映画を観たいという気持ちにさせてくれる。

 

 

落下音

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これもなかなか優れた予告編。アート的で4つの時代が描かれるということもあり構成も複雑な映画なのだろうが、それらをたった1分少しでさらりと説明し、更に不穏な空気をきちんと醸し出している。農作業トラクターの前に人が倒れていて今にも轢かれそうになっていたり、少女の口に虫が入っていったりと、シーン一つ一つがウゲッと目を背けたくなる気持ち悪さに満ちていて素晴らしい。これもやはり映画の素材が良いのだろうが、予告編でたくさんの不気味シーンを出していると、本編でネタ切れを起こしていないかどうかが不安なところ。そんなことは杞憂で、予告編の映像は序の口というレベルだったらいいのだが。タイトル読み上げも「らっかおん」という端的な言葉が二重音声になっている。これまた不気味で素晴らしかった。

 

 

Riceboy ライスボーイ

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そもそも映画自体がかなり地味な作品なのだと思う。正直、予告編だけでは鑑賞意欲は湧かなかった。『落下音』などがそうなのだが、やはりインパクトある映像を予告編で打ち出せる映画というのは興味を惹かれるし、すごくキャッチ―で強い。それに対して本作はそもそもドラマジャンルだと思うが、グッと心を掴まれるようなシーンやセリフがなかったのが残念。ライスボーイとからかわれ、異国の地で孤独を抱える少年とその母親の物語なのだなという筋書きは頭に入ってくるのだが、それ以上のプラスアルファが欲しかった。でもこういう映画こそいざ観に行くとすごく心に残ったりもする。ただ本当に、誌面や記事の薄っぺらい感想文を予告編で載せるのはやめてほしいなと。「最初から最後まで美しい」「涙が止まらなかった」、こんなAIですら言わないような陳腐な感想をドンと画面に映して、こっちの興味を惹けるとでも思っているのだろうか。泣けるかどうかちゃんと説明しないと観にこないと、そう思われるくらい観客は舐められているのか。

 

 

俺たちのアナコンダ

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ジャック・ブラックとポール・ラッドのダブル主演でのアナコンダアクションコメディ。アナコンダの新作を撮ろうと試みるクルーが密林の奥地で巨大アナコンダに襲われる…という、令和の現代では珍しいほどまっすぐなパニックムービー。単に続編やリメイクではなく、「俺達がアナコンダを撮るんだ!」という切り口が斬新な1作である。ジャック・ブラックとポール・ラッドの親密度がよく分かるコメントからスタートするこの予告編は、非常に分かりやすい。「こういうコメディ的なモンスター映画をやるんだよ」という気概が随所に表れているため、映画館に来た人たちの目にも留まりやすいのではないだろうか。ただジャック・ブラックが死んだ→遺体を囮に使おう→実は生きてた、大変だ!の流れは、予告でここまで出してしまってもいいのかなと危惧している。

 

 

黄金泥棒

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敬愛する萱野孝幸監督の最新作(何なら先週も『津田寛治に撮休はない』が公開されたばかりだが)ということもあり、今週公開分では一番期待している本作。ただ予告編に関してはすごくチープというか、既視感のあるコメディだなという点が拭えず非常に悲しい。萱野監督ならこんなレベルで終わるはずはないのだが、どうしても“よくあるコメディ邦画”の予告編の域を出ていない。金に魅せられた女性が不倫した夫と共に100億円相当の金茶碗を盗み出すという最低限のストーリーこそ理解できるが、やはりプラスアルファが欲しかったところ。ただアート的な映画やホラーじゃない限り映像で興味を惹くのは難しいので、これが日本におけるコメディドラマ予告編の限界なのかもしれない。予告編は微妙だが、映画は絶対観てほしいところ。萱野監督、本当に外れがないので!

 

 

PILOT ー人生のリフライトー

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曲がいい!良すぎる!選曲の勝利である。

全てを失ったパイロットが女装して再びパイロットになろうとする韓国のコメディ映画。正直予告を観た限りでは内容があまりに酷いというか、女装をギャグとして扱うのはどうなのだろうという気もしてしまった。とはいえ、女性しか応募がなく女装するしかなかったというスタートからきちんとジェンダー問題にも触れてくれるだろうという期待はしている。あくまでこの反吐が出るような予告編は性別問題への意識が低い日本人向けのチューニングなのだろうなと(それでも舐められたものだが)。特に最悪なのは男性ナレーターの「俺、着陸します」「わたし、離陸します」というところで、女声を使う辺りの気色悪さとかは本当に厳しいなと。映画の主役も女装状態だから同じようなシチュエーションが劇中にある可能性はある。ただそれはそれとして、この男性が無理して女っぽく喋っている感を隠そうともせず笑わせにきているスタイルが自分には結構無理だった。

ただ、音楽が素晴らしすぎる。本当に選曲が最高。Shazamで調べたところ、前半はBigger Story Musicの『Party Starter』、後半はShiraz Rimonの『Smiley Faces』。Bigger~というのはアーティストというよりは、こういった予告編等に使えるような楽曲を多数作っているスタジオらしく、20年以上の歴史もあるらしい。日本語では解説してくれているサイトがヒットせず、英語でもまったく詳細が掴めなかったのでそこまでのことしか分からなかった。しかしこんなノリノリになれる音楽をどこから見つけてくるのか。韓国版の予告は2つの曲を使っておらず、むしろ上記の『黄金泥棒』のようにどこかで聴いたことのあるようなBGMを使っていたので、日本版の予告を作成するにあたって選曲してくれたのだろう。予告編作成者もきちんとクレジットしてほしい。こんなセンスのあるDJがいるなんて…。

 

 

殺手#4

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香港と日本合作のアクション映画。主演の南沙良に加え、竹中直人や斎藤工なども出演しており、日本語と広東語(多分)が入り混じっている様が面白かった。ニチアサなどで活躍する坂本浩一監督と『ベイビーわるきゅーれ』等の阪元裕吾、Wサカモトが関わっているのでアクションに関してはきっと申し分ないものになっているのだろう。ただ予告編に関しては…正直全然良さを感じられず。せっかくのアクション映画なのだから、模型屋がショットガン出す面白シーンよりも、ど派手なアクションが観たかった。

 

 

炎かがよへ

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経営者から映画製作者という異色の経歴を持つ堀江圭馬の2作目。彼は今回、原作と製作総指揮としてクレジットされている。と聞くと興味は惹かれるのだが、予告編は邦画の悪い所丸出しという出来で、観に行こうとは思えなかった。でも脚本に『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』の冨岡淳広がクレジットされているので、一応確かめにはいきたいなと。ただどうにも映像の安っぽさが目立ち、それがドラマの足枷になってしまっている気はする。あくまで予告編を観た限りだが。

 

 

ザッケン!

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マンガワンで連載中の同名漫画の実写化。目立つような作品ではないが、中盤で出てくる「このタンポポを主人公に見たら、走っている皆さんは背景に見えます」がすごくいいセリフで、作品の核となるメッセージが端的に伝わってくる点も含めて、映画には期待できそうな予感。ただ予告編序盤の、セリフをポップなフォントで文字起こしする演出は本当に意味が分からないのでやめてほしい。もはや宣伝の常套手段にはなっているが、視覚と聴覚で同じ刺激を与えてくるのはどうしてなのか。別に聞き取れないわけでもないのに。

 

 

OCHI! -オチ-

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オチという小さな猿のような生物と少女の物語。これはオチがただただ可愛いという理由で悪くない予告編。変に観客を笑わせようともしていないというか、しっとりしたファンタジーなのだろうなというのが伝わってくる辺りの誠実さが良かった。背景の美しさもきちんと出ていて、さすがA24だなあと。題材が面白そうなので落ち着いた予告でもしっかり訴求力を保てている印象。

 

 

済州島四・三事件 ハラン

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政府による無差別虐殺という陰惨な実際の事件を基にした作品。内容が内容なだけに観る人も限られていると思うのだが、予告編ではほとんど親子が一緒にいる場面ばかりなのが印象的で、この2人の物語なのだなという強いイメージを与えてくれる。使われているBGMはZiv Moranの『Days of Change』。『Houglass』というアルバムに収録されている。

 

 

ヒット・エンド・ファン!臨時決闘

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『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』のキャストが多く出演している本作。予告編を観てもらえれば分かる通り、トワウォネタが劇中でも取り入れられている様子。予告編の感想としては無難というか、これといった引きがあるものではなかった印象。とにかくリングが画面にずっと出ているようなのだがアクション劇とは違ってあくまで試合なので、殺伐としているわけでもない。むしろカラッとした作風が持ち味の映画なのだろう。ただそこまでそそられはしなかったなあと。

 

 

501号室の男 ある作家の記録

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題材が面白そう。自分も自宅で上の階の住人の物音に悩まされている人間なので凄く共感してしまった。そうでなくともサスペンスとしてかなり面白そうな予感。上階からの異音に加え、カルト宗教要素も入っているようなのでとても楽しみ。ただ予告編では平凡なサスペンスの域を出ないなあと。カルト宗教成分も映像では全然感じられないのにテロップで出してきている辺りがあまり好みではなかった。ネタバレ配慮なのだろうか。曲は前半がFreshmanSoundの『Killer Game』、後半が同じく『Fear』。個人的には前半の『Killer Game』のメトロノームのような規則的なリズムが凄く不穏で好き。ただこれは『PILOT ー人生のリフライトー』とは異なり、韓国版の予告でも同じ楽曲が使われていた。

 

 

黴の花

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捨てたものにこそその人らしさが宿ると信じて他人のゴミを漁る主人公。そこから恋物語が始まるというのは、非常に純文学的だなあと。実際韓国の小説の実写化の様子。凄く静かな映画の予感がしているが、BGMも雰囲気に合っていて完璧。調べるとシン・スンウンの『Po-Ong』のインストバージョンらしい。原作が邦訳されていないのが残念。ちょっと本筋とは逸れるのだが、この『黴の花』と、1つ上で感想を書いた『501号室の男 ある作家の記録』は配給が同じくJIGGY FILMSで、どちらも予告の最初に出る受賞の文字のフォントが同じなのである。これって実は配給会社によって特色があるのだろうか。

 

 

ロングホットサマーバケーション

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全編が主演の志田こはくによるナレーションという意外となかった手法の予告編。ナレーションばかりの予告編は苦手だが、これは斬新でかなり面白かった。そして志田こはくによるナレーション芸と言えば当然彼女の出世作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』を連想させ、公式サイトの監督コメントでもそこにあやかっていることを隠そうともしない姿勢が好意的。戦隊好きとしては志田こはく主演というだけでもう観に行くことが義務になっているようなものなので、作り手からもそうした戦隊愛を感じられるのはとても嬉しい。志田こはくだからこそ二重の面白さがしてきているが、実際ナレーションだけで映画を説明するという手法はかなりありなのではないか。映画を観ている時、「あ、これ予告で何度も聞いたセリフだな」という気持ちが過ってどんなに良い台詞でも1回雑念が入ってしまうパターンが結構多いので、セリフなしでひたすら主演が映画を説明するシステムは発明な気がしている。

 

 

4/4(土)公開作品

 

マダム・ソワ・セヴェンヌ

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日本とフランス合作の、マリー・アントワネットが愛したとされる、ロココ時代の伝説の絹〈セヴェンヌ〉に関するドキュメンタリー。事件を追うような内容でもなく、養蚕から制作までを記録したドキュメンタリー映画なので必然的に予告編にドラマ性はないのだが、音楽が綺麗で聞き入ってしまう。使われているBGMは本作で音楽を手掛ける小関佳宏の『この空の下』。既存曲だがこの映画のためにアレンジが変更されているらしい。既に映画のサントラも出ている。予告編内に出てくる各著名人からのコメントもオリジナリティに溢れている且つ長ったらしくなく好印象だった。

 

 

エス(インターナショナル版)

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先日新宿のK’s Cinemaに『津田寛治に撮休はない』を観に行ったらシアターの入り口で本作の主演女性がビラを配っていた。ミニシアターあるある。本作は不正アクセスなどの容疑で30日余りを留置場で過ごした太田真博監督が、自身の体験に着想を得て製作した人間ドラマ。何かしら事件を起こした著名人の復帰問題が何かと話題になる昨今だが、太田監督は幸いにも(?)そこまでの知名度がないので本作がネットで炎上するようなことはないはず。とんでもない実話に基づいているためフックはあるのだが、予告編は正直事態を呑み込めないというか、単純に頭の中にストーリーがしっかりと形成されない印象だった。あらすじを読んでそういう話ねと納得するような。

 

 

三角屋の交差点で

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震災によって家を失ったことで人生が動き出した家族のドキュメンタリー。予告編は構成が印象的。震災後も希望を失わず、前向きに過ごし家を手にするところまで来れた…という希望的な予告と見せかけて、タイトルが出た後には過去の写真を背景に「できれば、家族と一緒に…」という嗚咽交じりの言葉が聞こえてくる。題材の重さをしっかりと感じさせてくれる余韻のある予告編だった。

 

 

XiXi(シィシィ)、私を踊る

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台湾からヨーロッパに留学していたウー・ファン監督が、偶然ベルリンで出会った中国人のコンテンポラリーダンサーXiXi(シィシィ)を追ったドキュメンタリー映画。1人の女性を被写体としたドキュメンタリーなのにかなりドラマ性に溢れているようなのが予告編からにじみ出ていた。テロップの言葉が少し陳腐なのが気になるが、悪くはないかなと。

 

 

今週は全部で20本。4K版等のリバイバルは除いていくことにした。特別良いものがあれば言及するかもしれないが。予告編として素晴らしかったのは『PILOT ー人生のリフライトー』と『ザ・ブライド!』と『ロングホットサマーバケーション』。特に『ロングホットサマーバケーション』の始終ナレーションシステムはどんどん浸透していってほしい。