12/12週公開の映画予告編を紹介していく。
今週は無難なものが多かったというか、目を引くような予告編があまり見られなかった印象。とはいえ、前回も伝えた通りこの予告編感想は本編公開前の感想なので、作品自体はとんでもない傑作ということも考えられるということは改めて言っておきたい。
- ロマンティック・キラー
- エディントンへようこそ
- プラハの春 不屈のラジオ報道
- バーフバリ エピック4K
- 悪魔祓い株式会社
- シェルビー・オークス
- シャドウズ・エッジ
- ジ・エンド
- ガスト・アップ
- MARINES DOCUMENTARY 2025 すべての敗れざる者たちへ
- 映画 きかんしゃトーマス サンタをさがせ! パーシーのクリスマス急行
- 小川のほとりで
- Good Luck
- 落語家の業
ロマンティック・キラー
3つのテーマソングを順繰りに流しつつ、とにかくポップな字幕とキャラの量でのゴリ押し予告。名前を見なくとも英勉監督作品だと一目で分かるようなコミカル映像に仕上がっている。予告の情報量が多いので、単純に楽しい。恋をしないと誓った主人公の前に現れる複数のイケメン…が次々と押し寄せ、そのパロディまみれの物量についつい笑ってしまうのだ。刀剣男士やコナン君まで現れるふざけっぷり。原作を知らないのでどれほど忠実なのかは分からないのだけれど、この極彩色イケメン映画なら頭空っぽにして観られそうだなあという印象を与えてくれる。ドーパミンをドバドバ出させてくれる現代的な予告編だと思うが、それは同時に映画の中身をほとんど出し切ってしまっていないか…?という懸念にも繋がる。自分は予告で観たシーン以上のものが本編にないと結構不満に思ってしまうタイプなので、正直予告の1.5倍くらいはイケメンキャラが出てきてほしいのだが、多分残弾はないんだろうなあ。せめて1人か2人くらいはサプライズがいてほしい。スマブラパロディの「〇〇参戦!」予告はかなり良かった。
エディントンへようこそ
アリ・アスターを支持してる人間の感想なので作品に関してはどうしても贔屓してしまうのだが、予告は非常にシンプル。上記の『ロマンティック・キラー』と違い、まだまだ映画の全貌が謎に隠されているように感じられた。いい意味で情報量が少なく、本編をかなり楽しめそう。ただまったく興味のない人が映画館で偶然この予告を観た時に訴求力があるかというと微妙な気がする。せっかく大ヒットしたわけだし「ミッドサマーの監督」という点を強くプッシュしてほしかった。それをやらない上品さも好きなのだけれど、前作の『ボーはおそれている』がかなり厳しい興行収入だったことを思うと一旦巻き返してほしいので。
プラハの春 不屈のラジオ報道
出たぜ、実話推し!「緊迫の実話」はあんまり聞かないフレーズなので、そこは新鮮で良かった。冒頭の「アカデミー賞 国際長編部門 ショートリスト」ほか受賞歴をズラッと羅列する辺りも含めて、映画予告編のお作法に則った非常に丁寧な予告だなあという印象。ちなみにショートリストとはノミネートの5作品に絞られる一つ前の段階のこと。要するに「チェコ・スロバキアはこの映画を2024年のベストとしている!」というアピール。自国の歴史が語られる映画なのでそりゃあ支持する人も多いよなあと。そしてそれが世界に広がるというのは喜ばしいことである。実は本国での公開は昨年の夏なので、これがもしショートリストにノミネートしていなければ日本人の私は存在すら知らないままだったかもしれないと思うと恐ろしい。映画を作ってくださる人々にはもちろん、世界中から映画を見つけて日本で公開してくれる配給の方々にも頭が上がらない。脱線したが、映画予告編としては硬派な作りの1本だった。
バーフバリ エピック4K
言わずと知れた名作、『バーフバリ』の前後編を1本に再編集した映画の予告編。「1つの名を冠する2本の映画」という表現が極まっていて最高。過去作ということもあるのだが、それにしたってあらすじを一切説明せず「熱狂しろ!」と言わんばかりにサービス精神旺盛なシーンをバンバン出してくる姿勢が素晴らしい。ナレーションもなく、映像に酔える。そしてそのコンセプトが『バーフバリ』の唯一無二感と繋がってもいる。自分はリバイバル(とはちょっと違うが)にあまり興味がないのだけれど、予告を観てやはり観るべきかなと思い直させられてしまった。内容もほとんど忘れているし…。
悪魔祓い株式会社
「確かな拳で 確かな祓い 最短解決」のキャッチコピーが素晴らしすぎる。これは年内でもかなり上位のキャッチコピーではないだろうか。「確かな祓い」の部分が最高。そしてそんな言葉遊びに現実性を伴わせてくれるのがマ・ドンソク。名前は知らなくとも姿を見れば絶対に忘れないシルエット。逆に、名前のキャッチ―さも印象的なので姿を知らなくても名前は聞いたことがあるという方もいるかもしれない。この予告編でもGAGAのロゴの後すぐにデカデカと出てくる「マ・ドンソク主演」の文字。この男が如何に映画ファンから求められているかが分かる。ムキムキのエクソシストと聞くとコミカルなイメージを持つが、予告編がマ・ドンソクをプッシュしているだけで、眼前に広がる映像は監視カメラのものだったりと結構ホラー色も強そう。惜しむらくは予告編あるあるな、最後タイトルが出た後のギャグシーン切り抜きがまったく面白くないところ。エクソシストに白目を剥かせるのが、少なくともこの映像だけでは文脈的に変なので(だって白目は悪魔じゃん)。
シェルビー・オークス
映像の恐ろしさがとても良い感じ。予告編は雰囲気と大まかなあらすじが伝わればOKなので、こういう趣のあるホラー映画の予告は大体が面白そうに感じられてしまう。実際どうなのかは観てみないと何とも言えないのだが、宣伝としては完璧ではないだろうか。怪異の正体を明かさず、不気味なシーンばかりが提供され、否が応でもワクワクしてしまう。もちろんこれだけ極上の予告編が出されると自然とハードルも上がってしまうのだが、これはあくまで予告編の感想なので本編がどうであろうと関係はない。ただ、「トラウマ級の恐怖が迫る」はありきたりすぎてセンスを一切感じられなかった。それがオミットされている点でロング予告編のほうが好み。
シャドウズ・エッジ
ジャッキー・チェン主演の最新作。正直ジャッキー・チェン主演以外は大きな要素に感じられないのが残念だが、スピード感のあるアクション映画らしい予告は王道で悪くない。欲を言えばもうちょっと新規性をもたらしてくれるようなフレーズや設定が欲しかった。「シャドウズ・エッジ」なるタイトルも抽象的で分かりづらい。ただこの手の無味乾燥的な予告編が出てくる映画は、意外と本編がめっちゃ面白いというパターンがあるので侮れないのもまた事実。ぶっちゃけ海外映画の予告編は、日本の宣伝が映画のどこをプッシュするかという話なので、そのチューニングが絶望的に合っていないことが稀にあるのだ。
ジ・エンド
このテンションからスタートしてミュージカル映画だと明かされた時の衝撃。結果的にちぐはぐな印象を受けてしまったものの、予告編としての面白さは素材の味が良かったのか、かなり上位に来るのではないだろうか。どうでもいいけど、こういったサスペンスや謎めいた映画の予告編でピアノの一音がカーンッとなる演出、予告編にめちゃくちゃ多い気がする。これからはピアノカーンッ映画として、ウォッチしていきたい。この予告で言うと3秒の辺りです。
ガスト・アップ
予算の問題だろうが、単純に面白くなさそう…。キーパーソンらしき黒髪ボブの女性の一続きの台詞をバラバラに出してくるのはまあいいとして、その映像部分まで一々出してくるので志の低さを感じてしまった。ああいうのはナレーション的に使って、最後の一言でそのシーンを映像も含めてドンと出すほうがいいのでは。そしてそのセリフの内容もあんまりよく分からないんだよな…。単純にあらすじもよく分からずキャッチ―さもないので、魅力を感じるのが難しい一作だった。
MARINES DOCUMENTARY 2025 すべての敗れざる者たちへ
野球をまったく知らないのだけれど、ビートとテンポ感だけで期待を煽られてしまった秀逸な予告編。これで選手が号泣したらさすがにきつかったが、そういったこともなく淡々と「敗者」という現実を突き付けてくる構成が見事だなあと。変な感動推しではなくマリーンズのファンに向けた真摯な作品であることがよく分かる予告編には好感が持てた。
映画 きかんしゃトーマス サンタをさがせ! パーシーのクリスマス急行
今のトーマスって模型じゃなくて2Dなんだ…と勝手に衝撃を受けてしまった。調べると2021年放送のシリーズからこうなっているらしい。トーマスといえば子供向け番組なのに機関車の正面にドンと不気味な顔が付いている衝撃的なビジュアルが頭から離れないのだが、こうして2Dアニメーションになると普通にかわいく見えてくるから不思議である。物語自体はパーシー達がサンタさんを探しに行くというシンプルでハートウォーミングな話らしく、特筆すべき点は見当たらなかった。でも変に大人への目線を持っても嫌なので、こういう真っ当な子供向け映画がクリスマス前に公開するのはかなり素敵だなと思う。
小川のほとりで
月刊ホン・サンスと題して、ホン・サンスの監督デビューから30周年を記念した、月1で彼の作品を上映するという企画の第2弾。申し訳ないことにホン・サンス監督の名前を初めて知った。月イチエヴァみたいなことは実は結構起こっているのかもしれない。ミニシアター系らしい素朴さが良く、主人公と叔父の2人のカットはどれも心の距離や奥行きを感じられる。
Good Luck
足立紳監督、剛力彩芽、板谷由夏の3本柱の宣伝。ミニシアター系なので名のある俳優さんが出ていることをプッシュしたいのは分かる、分かるけども、この露骨さはどうなのだろう…。何ならYouTubeの予告編のタイトルにも「剛力彩芽出演!」と入っていた。
落語家の業
『「黒宝」ドキュメンタリー』というフレーズがとにかく良すぎる。結局こういうもじりとか言葉遊びに弱い。快楽亭ブラックさんのことは一切知らない(ドキュメンタリーの予告観ると本当に自分は無知だなと思い知らされる…)のだが、それでも過去の差別を想起させる言葉でかなり引き込まれた。ただ、彼がどういう人物なのかはよく分からないため、この予告編だけで観たいとはならないのが惜しいところ。「コンプライアンスの超越者」というキャッチフレーズの中身があんまり伝わってこなかった…。残念…。
今週はイケメンの物量で押す『ロマンティック・キラー』と、『悪魔祓い株式会社』の「確かな拳 確かな祓い 最短解決」が良かった。『ロマキラ』が映画の内容を全部見せ切っちゃっている危険性を考慮すると、『悪魔祓い』に軍配が上がる。やはり今週はほとんどが正統派の予告編だったせいか、つっこみどころが少なくてイマイチ盛り上がりに欠ける。年末も近づいているが、もっと変な、胡乱な、不気味な予告編で劇場が活気づくことを祈りたい。