本国の放送と順序が異なってはいるが、全21話で最長シーズンのシーズン4。既に折り返し地点を過ぎているが、元々そこまでかっちりと構成されているシリーズではないので、気付いたらここまで来ていたという感覚が非常に強い。このアニメの魅力は差別や迫害を受けながらも自身が正しいと思うことのために戦い続けるX-MEN達の人間味だと私は思っているので、シーズン3の感想に書いた通り、宇宙人達との大規模バトルはあまり好きにはなれなかった。Filmarksで感想を漁るとどうやら同じようなことを思っていた人は結構多いらしい。90年代放送の海外産アニメなので、インターネットで初見感想になかなか巡り会えないのが悲しい限りである。Filmarksは短文で投稿できてしまうのであっさりとした感想しか読めない。
シーズン4の感想としては、結構面白かった。シーズン3を経て自分の中でX-MENの楽しみ方が固まってきてしまったこと、そしてこのシリーズは自分の好みと合わないような作劇を一大イベントとして放り込んでくること。以上の2点を頭で理解してしまっていたがために、シーズン2までのように純粋に作品を楽しむということが難しくなってきてはいる。「この大味の展開、全然好きじゃないんだよな…」と退屈を感じ、それが翻るような仕掛けも特に用意されてないだろうと良くない予想が組み上がっているのだ。純粋に1話完結エピソードをやりつつ、それらがクライマックスで有機的に繋がり見事な感動を生む…という作風でもないため、令和の日本人である私にはそもそもこの構造自体が合わないのかもしれない。と思いつつ、個別エピソードや前後編ではなかなか攻めの姿勢を見せてくれた。オムニバス形式(完全なオムニバスではないが)はすなわちバイキング。シーズン4はとにかく物語のバリエーションが素晴らしいのだ。だからこそ、要所要所で展開される一大イベントの物量で攻めてくるスタイルに嫌気が差してしまう。なぜ自分の持ち味を自ら殺すような真似をしてしまうのだろうか、と。
第1話はジャガーノート復活。ミュータントでもないのに何なんだこいつは。プロフェッサーを弟扱いしてるけどどういう意味なんだ。などなど、数々の疑問が解消される上に彼の心の根っこの部分は決して野蛮なだけではないのだということを教えてくれる素敵なエピソード。1話目に相応しいかは微妙なところだが、ダークフェニックスの話を何とか観終えた後だったので、カラッとした1話完結エピソードがとにかく嬉しい。ジャガーノートの力を手にしたあのスカスカな冴えない男も、いい味を出していた。ジャガーノートを一気に好きになるには、これまでの粗暴さと今回の好感度上げが釣り合っていないのだけれど、プロフェッサーの過去も知れて、後味は結構いい回。
第2話はオメガレッドが再登場。ソ連の核ミサイルを積んだ潜水艦を引き揚げるため、アメリカ政府はオメガレッドに協力を求めるのだが、彼は引き換えにX-MENのウルヴァリンとストームが自分に付いてくることを要求。結局アメリカ政府を裏切ったオメガレッドと、ウルヴァリン達が戦う羽目になる物語。いや、そりゃそうだろ!とツッコミたくなるくらい当たり前にオメガレッドが裏切る。体内に爆弾を埋め込んでいただけで安心していたアメリカ政府の頭の悪さも最高。悪党に核ミサイルを自由にできる権利を与えないでほしい。というと2026年の社会情勢にも重なってきてしまうが…。前提がアホすぎるので気楽に観られたエピソードだった。
第3話第4話は前後編。マグニートーがミュータントを連れて惑星へと移住しようとする…というこれまたアホすぎる回。実写映画だと仲間であるミュータントを護りたいという強い思いから人間を敵視するという、憎めない悪役となっているわけだが、アニメ版の彼はそこに少々アホが加わっているらしい。ミュータントを傷つける人間を許せないというよりも、そもそもミュータントと暮らしたいという平和な考え方のほうが優先されている。確かシーズン3には登場していなかった気がするので、久々の登場なのだが、スタートから変な計画を進めるのでいきなり面白い。しかし彼の計画は人間を憎むコルテスというミュータントによって瞬時に瓦解する。コルテスによってマグニートーは倒され、X-MENはミュータントの指導者となりつつあったマグニートーを殺害した罪で追われる身に。結果的にはX-MENとマグニートーが協力してコルテスを倒す流れへ。映画だとプロフェッサー率いるX-MENとマグニートー率いるブラザーフッドの呉越同舟はかなり燃える展開なのだが、アニメ版はエリックがそもそも結構アホで萌えキャラなのと、そこまでエリックとX-MENが対峙している回がないのとで、せっかくの共闘に旨味が薄いのが少々残念。
第5話は気を失ったプロフェッサーが頭の中で過去を思い出していく回。彼を脳内で襲う何かの正体は、シーズン2にも登場したシャドウキングだった。シャドウキングが何者かという説明もこの回でされるわけだが、どうせならシーズン2の時にしてほしかった。「プロフェッサーがアストラル界に追いやったはずだが…」というくらいのことしか言われなかったので、まさか再登場するとは思わず。第6話はモーフ回。モーフの登場はシーズン2のラスト以来だったはず。あの時とは顔つきもかなり変わっているが、シーズン1でセンチネルに襲われたことがトラウマとなっており、彼がX-MENとしてそれを克服するというシンプルながら良いエピソード。日本のホビアニにもありそうな質感。私は『ONE PIECE』のウソップVSチュウ戦が大好きなので、こういう弱いキャラが勇気を振り絞って逃げずに戦うという物語に弱い。X-MENの面々は精神的な人間臭さこそ描かれるものの、バトル面ではかなりの実力者なので、こういった手垢の付いたエピソードが新鮮に映るのも面白かった。
第7話はかなりの名作かもしれない。1人故郷に帰ったスコットだったが、故郷は偉そうなミュータントに牛耳られ、弱気なミュータント達は彼に従うしかなかった。そんな状況を見かねてスコットが立ち上がり、その勇気が街の人々にも伝播していく…というストレートに胸が熱くなるエピソード。そして8話でナイトクローラーが登場。ビジュアルのインパクトは絶大で、実写映画での扱いや活躍を知っているために、余計に「満を持して」といった登場だった。瞬間移動能力と野生動物のような俊敏さという、ハイスペックなミュータントなのに、見た目の威圧感で悪魔扱いされてしまうという悲しい男。そんな彼は修道院で育ち、神の存在を信じている。シーズン4の中でも突出して差別迫害描写が凄まじいエピソード。自分達を憎む人間を赦すことができるのか…というウルヴァリンの問いに対して、「できないからこそ神に力を借りるんだ」とさらっと名言を出すナイトクローラー。もうこの一連のやり取りだけで彼の気高さと優しさが表現されている。これまた名作である。
第9話と第10話は変わり種の前後編。何が変わり種かというと、視聴者の知っているキャラクターがほとんど登場しないのである。ウルヴァリンとストームがメインなのだが、彼等は私達が今まで観てきたアニメの世界線とは別の、ミュータント迫害が人間とミュータントの戦争まで発展してしまった恐ろしい世界の住人。しかも2人は恋仲。これまでのアニメでは考えられないほどに2人の距離が近く、恥ずかしくて見ていられないくらいである。戦争が起きた理由は、タイムトラベラーによって1950年代でプロフェッサーが殺されてしまったため。実感こそないものの、ビショップの話を聞いた彼等は会ったこともないプロフェッサー殺害を食い止めるために過去へ向かう。変わり種なエピソードで新鮮味も強く、なかなか面白かった。
第11話と第12話もこれまた前後編である。怪物のような巨躯と強大な力を持ったプロテウスというミュータントが登場。彼はプロフェッサーの元恋人・モイラの息子であり、愛情に飢え、力に任せて自身を認めてくれるであろう父親を捜し続ける。純粋ゆえに暴走してしまうティーンエイジャーの彼を止めるためにX-MENが奔走するという物語。プロフェッサーの遍歴がまたも明らかになり、以前描かれたプロフェッサーとモイラの微妙な関係の謎も判明する。異次元の強さを持つプロメテウスが父親に会いたい一心で暴れ回る姿が物哀しく、父親のマクタガートもなかなかのクズという悲劇的な結末がいい。政治家として票を集めるために「愛する子ども達を守り抜きたい」とのたまうくせに、自身の子どもと向き合おうともしない清々しいクズ。X-MENには複雑なキャラクターが多い中で、良くも悪くも純粋なキャラ達の物語だった。
第13話ではクイックシルバーとスカーレットウィッチが登場。MCUでお馴染みのスカーレットウィッチと、実写X-MENで大活躍のクイックシルバー。敵に騙され実の父親であるマグニートーを母親の仇だと信じ込んだ彼等が、マグニートーを襲撃しに来るエピソード。各映画でこの2人の背景を知っているからこそ(MCUでは諸々の理由で出自が改変されていたが)、やっと彼等をアニメで観られたという嬉しさはひとしお。ハイ・エボリューショナリーについても「ロケットを改造しやがって…!」と存在しない記憶が発動し、メタ的な意味で面白い回になっていた。第14話「運命」はナイトクローラーが早くも再登場。彼もまた飛びっきりの善性を有するキャラクターなのだが、辛い境遇にありながらもなお神や人々を信じ続ける善性が、X-MENの心をほぐしていくのが感動的なのである。特に、神など絶対信じなさそうなウルヴァリンがナイトクローラーの言葉に感化されていく姿はすごく美しい。前回登場時にちらりと、幼いナイトクローラーを捨てた母親がミスティークである描写がなされたが、今回はその補強がされていく。ナイトクローラーはやはりミスティークの息子で、同時に産まれたばかりの自分を悪魔と決めつけ殺そうとした貴族(父親)の息子でもあり、反ミュータント組織・人類の友の創設者であるクリードの弟だったのである。相関図がどんどん埋まっていく爽快感あるエピソードで、ナイトクローラーが出てくるとこのアニメは差別描写に拍車がかかり、物語としてのギアも上がっているような気がする。セイバートゥースとミスティークの息子であることを忌々しく感じているクリードが、同じくミュータントの弟であるナイトクローラーを誘き出し殺害しようとするわけだが、話の筋は先日アカデミー賞を受賞した『ワン・バトル・アフター・アナザー』に近いかもしれない。ワンバトじゃないか、と勝手にテンションが上がってしまった。
第15話ではウルヴァリンが帰郷。触れるもの皆傷付けるような野獣のような本能がまだ自分の中にあることに恐怖した彼は、X-MENを抜けて日本へと帰郷する。冒頭数分でプロフェッサーに自身の思いを話すウルヴァリンが非常に悲しく、もう既に涙腺がやられてしまった。ウルヴァリンが帰郷した先が日本と言いつつ、まったく読めない複合的なひらがなの看板が立てられていたり、音楽がどちらかと言えば中華風だったり、日本人としてはいろいろ言いたくなるエピソード。『ウルヴァリン:SAMURAI』は日本ロケがあっただけ全然マシだったのだろうなと思うなど。寺の建築を手伝い心を穏やかに保とうとしていた彼だったが、シルバーサムライなる悪人が村を支配し村人に上納金を収めさせる悪行を働いていることを知り、再び戦いの中に身を置くことになるのかと苦悩する。構造としては、ほぼ『ONE PIECE』のアーロン編である。面白いのは、第7話のスコットの帰郷エピソードと対になっている点。スコットは街を救うために人々を鼓舞し、結果的に彼の行動が住民達の勇気を奮い立たせる結果となった。つまり彼の生粋のリーダーシップがX-MENと関係ないところで表現されている。しかしこの15話は、どちらかというと住民達は抵抗する意志を強く持っており、戦いから身を引いたウルヴァリンの苦悩に焦点が当たるのである。人々がシルバーサムライと戦う中で、遅れて自分の生きる意義を見出したウルヴァリンが参戦してくるという構図で、彼はどこまでもこの「一匹狼」のスタンスを崩すことはないのだなと。人々を導くのではなく、自分なりに力を正義のために揮い続ける、そしてそれこそが、孤独な彼が人々と関わる方法なのだということを示してくれる物凄い密度のエピソードだった。しかし続く第16話で再びウルヴァリンが過去に囚われている。正規の放送順じゃないせいなのだろうが、さすがにどうにかならなかったのか。ウルヴァリンにはかつてシルバーフォックスという恋人がいて、彼女やセイバートゥースを含め研究者に利用されたミュータントと再会する…という筋書きなのだが、研究所の跡地はまるで撮影所のようにセットが組まれており、自分達の記憶が作られたものだったのだと悟る。しかしセットの木にはシルバーフォックスとウルヴァリンが名前を刻んだ跡はなく、2人が愛した時間は本物だったはず…とウルヴァリンがシルバーフォックスに説くが、彼女は「あれは大昔のこと」とウルヴァリンの元を去ってしまう。第15話がポジティブな方面の傑作なら、第16話はネガティブな傑作。それにしてもウルヴァリンの過去が過酷すぎる。
第17話はクリスマス回。名作傑作と各エピソードを評してきたが、この回がシーズン4では一番心に残ったかもしれない。なぜなら、本当に明るい物語だからである。苦々しさを強調するエピソードが多かったからこそ、クリスマスの奇跡が起こるハッピーエンドは強い感動を与えてくれた。瀕死のミュータントに輸血が成功したウルヴァリンというだけで第15話第16話の流れからして泣けてしまう。そしてガンビットとジーンがずっとキッチンで小競り合いをしてるのも面白い。何で両者共に料理にこだわりがあるんだ。クリスマスに相応しい暖かいエピソードで、作品の振れ幅を堪能できる回だった。
第18話以降は4話連続の長編が展開される。毎度毎度申し訳ないが、やはりこのシリーズの長編はあまりに大味過ぎて、自分には合わないなあと実感。タイムトラベル能力を手に入れ、時間軸の世界という時間が進まない世界に侵入したアポカリプスが、ミスター・シニスターやマグニートーと手を組み謎の計画を進めるために、様々なテレパシー系能力者を誘拐していく。X-MENだけでなくリランドラ率いるシーア―帝国や未来人のビショップ、ケーブルも登場し、X-MENなのに「アベンジャーズかよ!」とつっこみたくなるほどの集合具合。もうこれがシリーズのクライマックスでもいいのではと思うくらいに大規模な長編で、キャラクター量が多くアポカリプスを撃破するという目的が明確な分、フェニックスサーガよりは楽しめた。とはいえ、行き当たりばったり感は否めない。アポカリプスが自分の計画をずっとはぐらかしているため、彼は一体テレパシー系能力者を集めて何をするつもりなんだ…という謎を縦軸として物語は展開していくのだが、その実態は未来を見る力を持つ能力者をたくさん揃えて時間軸の世界を自らのものにし世界征服を進める…という、ただの悪役ムーブ。別にアポカリプスに人間的な感情があってほしかったわけではないのだが、大規模な作戦で引っ張った割には強引な理屈だったなとがっかり。マグニートーやミスティークは結果的にアポカリプスを裏切りX-MEN側に着くのだが、それもやはり呉越同舟感は薄い。時間軸の世界に囚われたビショップが鍵を握る予感を掻き立てておきながら、外から銃で撃ってテレパシー能力者を救うだけというのも拍子抜け。アポカリプスの貫禄と態度に、物語の強度が明らかに釣り合っていない印象を受けた。ワクワクした割に箱の中身は大したことがなかった、みたいな。
シーズン4は最後の長編こそ合わなかったものの、各エピソードは更にバラエティ色を増していき、なかなか退屈することがなかった。基本的にはプロフェッサーとウルヴァリンの物語が多く偏っていた部分もあるが、それでも十分な面白さ。やはり個々のエピソード、20分の尺でこそ真価を発揮するシリーズだなと実感。長編もまったく面白くないわけではないのだが、もう少し行き当たりばったり感が薄めだと嬉しい。残すはシーズン5、全10話のみ。一体どのようなクライマックスを迎えるのか楽しみである。