アニメ『X-メン』シーズン3 評価・感想

このシーズン3以降はDisney+で表示されている話数と実際の放映順が異なっているようで、実質的にはシーズン単位で括るのが妥当かどうかも微妙なところなのだが、とりあえずDisney+準拠でのシーズン3感想とさせてもらう。さすがにシーズン3まで観ると作品の楽しみ方も分かってきているのだが、このアニメはやはり「ビターな味わい」なのが特徴と言えるだろう。望んでミュータントになったわけではないX-MENの面々が、「こう生きるしかなかった」「この運命を受け入れるしかないのか」という苦しさと葛藤の中でもがき、自分が正しいと思った道を突き進んでいく姿。そしてそこには必ずしも彼等にとっての平穏が約束されているわけではないというほろ苦さ。そのビターな味わいこそがこの作品の肝であり、能力バトルものの側面を有しつつも、ただ楽しいだけで終わらない複雑さに心を掴まれるのだ。力を持つがゆえに迫害され、愛や家族を失う。その悲劇と痛々しさが、この物語の最大の特徴なのである。

 

偉そうに語ってしまったが、その視座を獲得してこの『X-メン』を観るようになった私にとって、シーズン3は非常に評価が難しかった。上記に書いたような作品の良さがあまり活かされないエピソードが続き、シーズン1,2ほどの熱量を持てなかったというのが正直なところである。

 

シーズン3はファン待望、そしてX-MEN映画ファンにとっては閉口してしまいかねない、フェニックスなるキャラが登場する。強大なエネルギーを持ったフェニックスは、宇宙にて任務中だったジーンに憑依し、彼女の肉体を乗っ取ってしまう。フェニックスにはX-MENですら歯が立たず、そして暴走してしまいかねない危険性を孕んでいるため、X-MENはジーンごとフェニックスを殺すかどうかという究極の選択を迫られるのだ。シーズン3は全17話と、1,2に比べて4話分も多いのだが、そのうち11話がフェニックス関係のエピソード。しかし私にはこのフェニックスのエピソードの山場感、大長編感によって、それまでのテンポが崩れてしまったように感じられ、シーズンの半分以上を楽しむことができなかった。

 

1話2話ではまだフェニックスは登場しておらず、その前座的な物語が展開される。ウルヴァリンのかつての恋人であるユリコが、彼女の父とは知らず自分を実験台にした科学者を貶めたウルヴァリンに復讐を誓い襲ってくるという悲劇的なエピソード。かつての恋人が長い指を武器として使う怪物になり自分の命を狙ってくる…ウルヴァリンの心労は一体どれほどだろうか。そして彼女が狙っていた宇宙船には怪物が封印されており、それを解き放ってしまったことでX-MENとユリコが力を合わせて怪物を倒すことに。無事に怪物を倒すことには成功したが、プロフェッサーはその後遺症で奇妙なビジョンを見るようになり、それがフェニックス・サーガへと繋がっていく。

 

3話~7話は何と贅沢に5話分も使った長編。サブタイトルにもフェニックス・サーガと付いており、制作陣にとっても気合の入ったエピソードだったに違いない。だが、単純にキャラクターが多すぎる。プロフェッサーの命令でスペースシャトルを占拠し、宇宙へと向かうことになるX-MEN。シャトルを襲撃したエリック・ザ・レッドと交戦し、その後宇宙から帰還しようとするも、シャトルが破損し危険な状態に。その危機を救ったのがジーンだったのだが、この時彼女の中にフェニックスという強大な力を持つ存在が入り込む。ジーンは昏睡状態に陥るも、何とかX-MENは地球へ帰還。しかし何者かによってプロフェッサーが(いつものことだが)操られ、深層意識に潜む破壊衝動を持った人格が幻となってX-MENを襲う。そこにプロフェッサーと強い繋がりを持った宇宙人の女性・リランドラが現れ、エムクラン・クリスタルなる強大な力を手にしようと企む兄・ディケンをX-MEN総出で止めることに。こうしてX-MENは宇宙規模の戦いに巻き込まれることとなる。

 

エリック・ザ・レッドを含めたディケンの部下(宇宙人)達がとにかく多いため、X-MENとも乱闘になるのだが、別に因縁がある敵ではないため戦闘は大味になってしまい盛り上がらず。ここまでならシーズン2終盤もそうだったのだが、5話を使ってのクライマックスがこれというのはさすがに厳しいものがある。プロフェッサーが若干葛藤こそするものの、X-MEN特有の苦々しさもなく、宇宙規模のド派手なバトル展開というのが自分には薄味に思えてしまったのである。ほろ苦い1話完結エピソードやたまにある前後編が持ち味だったのに、5話、助走を含めれば7話も使って設定とキャラをどんどん打ち出すような話をされても…と退屈してしまった。原作でも一大イベントだろうし、好きな人は好きなのかもしれないが、個人的にはX-MENに求めているものはこれではないなあと。自分の好みをよく自覚できたのは収穫だったかもしれない。面白味を感じられず集中力も落ちていたのでこの辺りで出てきたキャラクターの名前も全然頭に入らなかった。いや逆に言えば映画のおかげでX-MENのメンバーの人となりが頭に入っているからこそアニメ版をここまで楽しめたのだろうか。

 

打って変わってスコットの悲しい過去が明かされる第8話は、ハマれなかった7話分へのフラストレーションもあって最高だった。「これぞ求めてたX-MEN!」という感じ。ただ、放送順としてはずっと後に当たるようで、でも本編を観たらジーンが去った直後のエピソードになっていて…と、あまりこの辺りはよく分かっていない。OP映像がいつもと違ったのでやはり後半エピソードな気はしているのだが…。

スコットが孤児院育ちで幼い頃から能力によって周りから迫害されていた…というのも悲しいが、その中で一人の少女だけが自分を好きでいてくれた…という一輪の花感が素晴らしく、彼女との再会、そして自分と似た境遇の若きミュータントと並んで歩く姿も感動的だった。苦々しさの中に芽生える微かな希望、やはりこれこそがX-MENだなあと。

 

続く第9話は久々にアークエンジェルが登場。そういえばアポカリプスの他の四騎士ってどうなったのだろうか。彼も不本意にアポカリプスの手駒にされてしまったという辛い過去を持っており、特攻覚悟でアポカリプスへ向かっていく姿が非常に良かった。1人で戦っても勝ち目はないと彼を諭すローグ、AIと仲良くなるビーストなどなど、1エピソードに多様な要素が含まれていてこれも20分とは思えない密度の回。アポカリプスって宇宙に飛ばすしかないのか…。第10話も後半のエピソードのようなのだが、シーズン2で強烈なインパクトを残してくれたモジョーが再登場してくれて嬉しい限り。彼の一番のお気に入りであったロングショットが脱走するのだが、今回メインとなるのがジュビリーというのも良かった。最初の2話で仲間入りを果たしてから、彼女がメインキャラになることが結局なかったので、ある意味貴重な回かもしれない。そう言うとストームやガンビットもメイン回は1回しかないが…。

 

第11話は更にジュビリー回。X-MENの初期メンバーであったアイスマンとタッグを組むことに。暴動事件を起こしたアイスマンを止めるというストーリーなのだが、実は彼は最愛の恋人を誘拐されており、彼女を探すために施設を破壊し回っていた。問題児の彼を「自由な精神の持ち主」と表現するプロフェッサーの言葉選びが面白く、彼を寵愛するプロフェッサーと、敵視する他メンバーの違いもくっきりと表れていて、キャラクター群像劇として導入が最高。その後に明かされる、アイスマンの恋人は自ら政府の援助で設立されたX-FACTORなるチームに加入しただけ…という結末の物悲しさ。1エピソード限りの登場にも関わらず非常に魅力的だったので、彼にはまた再登場してほしいところ。

 

12,13話は前後編のソウロン回。シーズン2ではミスター・シニスターに操られ、大した印象を残せなかったソウロン。そんな彼がサヴェッジランドから出て、ミュータントや人間のエネルギーを吸い取りたい欲望に駆られ大波乱を巻き起こしてしまう。そこからサヴェッジランドに登場したギャロックなる謎の存在を取り巻く物語へと発展していくのだが、明らかな異形であるソウロンがとにかくかっこいい。本体のカールはシニスターに改造され怪物と化してしまった…という、やはりX-MENという番組らしい出自を持っているが、ソウロンに関しては敵キャラにしておくのは勿体ないくらいデザインが好きかもしれない。そしてギャロック側にストームが操られ、後編へ突入。本当この番組は味方が操られてばかりだが、面白ければ何でもいい。そしてやはり、ストームがとにかく強い。プロフェッサーも含め、敵に回したら厄介な奴ばかりが操られ敵と化してしまう。ただ考えてみるとやはりフェニックス・サーガを中心としたシーズンの物語だなあと。ストームもソウロンもジーンもプロフェッサーも、このシーズンでは「持ってしまった力との戦い」「自身の持つ破壊衝動を乗り越える」が重要な鍵となっており、そういう意味では一貫性のあるシーズンと言えるかもしれない。ソウロンが自身こそがサヴェッジランドの支配者だと、ギャロックに対抗心を燃やし相討ちとなるラストも素晴らしい。敵側も哀しい過去を持っているという人間味が出ていて素晴らしいエピソードだった。

 

そして再び長編へ突入。行方不明となっていたジーンは実はもう地球に帰還していてプロフェッサー達に回収されていた…という、もっと最初から説明してほしかったぜと思ってしまうロケットスタート。しかし彼女はフェニックスという人格に支配されていた。インナーサークルなるセレブ組織の親玉、マスターマインドに唆されたフェニックスは彼の恋人となりX-MENと敵対してしまう。驚異的な彼女の能力に歯が立たないX-MEN。その後プロフェッサーの奮闘(精神世界で戦いフェニックスを封印)によってジーンを救うことに成功するものの、リランドラが現れ彼女の処刑を言い渡す。プロフェッサーは彼女を説得し、結果的にX-MENとインペリアルガードが決闘することになってしまう。その最中フェニックスが復活し、またもX-MENはジーンごと彼女を殺すかどうかという選択を迫られる。しかし結果から言うと、決闘や葛藤の結果は関係なく、人間の感情を知ったフェニックスが自らジーンの肉体から離れて事態が収束する。死にかけたジーンを救うためにX-MEN全員がエネルギーを分け与えることで全てが丸く収まってしまった。ここまで大規模なエピソードなのに、結末は御伽噺のようなハッピーエンドで、かなりガッカリ。そもそも壮大な伏線がメインの作品ではないと理解しているが、それでもやはりさすがにカタルシスが欲しかったというか。話の規模をどんどん広げた割には、小さくまとまってしまったなあという印象。

 

続く18話は宇宙海賊となったスコットの父が再登場。前回はお互いに素性を知らないままだったが、今回親子であることが判明し、孤独に生きていたスコットは怒りをぶつける。しかし父親はスコットを死んだものだと勘違いしていたためであると分かり、誤解が解けて素直に話せるようになるという王道ほっこりエピソード。第19話はローグの元恋人が登場。ここにガンビットが全然絡んでこないのが不自然というくらいローグが元カレにべったりなわけだが、実は元カレは彼女と生きていくためにメカトカゲ人間に自ら進んで改造され、ローグも同じような姿にしようと企んでいた。彼にまったく悪気はないのだが、それゆえにローグの悲しみも深い。純粋な愛情が狂気に変わってしまう恐ろしさ、そして彼をその狂気に駆り立てたのはほかでもないローグのミュータントパワーであるという物悲しさ。これも20分にしては出来が良すぎる。丁寧なSF短編を読んだ時のような奇妙な後味があった。

 

というわけでシーズン3は長編が自分にまったくハマらず、正直モチベーションが落ちてしまい他のエピソードの記憶も既にだいぶ抜け落ちている状態。とはいえまだまだ作品は続く。数年前に再始動した続編を除いても、まだ31話も残されているようなのでかなり期待大。各キャラの個別エピソードも一巡したので、1話完結でそれを更に掘り下げるようなものになっていると嬉しい。