年末のアベンジャーズ新作までにMCUを一通り観よう、ということでスタートダッシュは果たしてマルチバースとはいえ新作に関係あるのかどうか全く予想できないアニメ『X-メン』を選択。新作も作られ続けているので無関係であると断定できないのが辛い所。マルチバース・サーガの集大成となればどこから何が飛び出してきてもおかしくないので、なるべく小ネタを拾えるように数を抑えておきたいのである。今回は休日に1日で観終えてしまったシーズン2の感想を。
シーズン2は端的に言うならばミスター・シニスター編といったところ。前シーズン最終話で名前のみ登場したシニスターが初っ端から登場し、ラスト2話で彼の目的が明かされX-MENのメンバーがシニスターとその部下であるミューテイツと激突する構成。強大な敵が登場し見事打ち倒すまで、というなかなかに硬派な構成で、有名な敵が矢継ぎ早に登場していたシーズン1とはまた違った趣かもしれない。いや、シーズン1もセンチネル編と言えるのか。
まず驚いたのはモーフの再登場。シーズン1の感想では憶えてすらいなかったためにまったく触れられなかった。映画しか知らない自分にとっては「だ、だれ!?」状態で、能力もミスティークと全く同じだし、元の姿に他メンバーほどの特徴がないし、すぐに退場してしまうし…という脇役っぷり。だがシーズン2は彼の物語と言っても過言ではない。シーズン1でX-MENに見放された(わけではないのだが)後、シニスターによって精神を改造され、心が善悪に分断してしまったモーフ。善のモーフはX-MEN時代の正義の心を忘れていないが、悪のモーフは自分を置き去りにしたかつての仲間達への復讐を誓うという、一層複雑なキャラクターに進化。再登場だけでおっと思わせる話題性を持ちながら、ドラマ面でも楽しませてくれるキャラクターへと成長していた。そして彼の能力を活用した暗躍によってX-MENは疑心暗鬼に陥ってしまう。結局力よりもデマゴギーによる分断のほうが脅威という、現代を象徴するかのようなエピソードになっているのが皮肉である。
モーフを改造しミューテイツ達を束ねる親玉がミスター・シニスター。メタリックな吸血鬼然とした見た目なのだが、能力としては手から黄色い光線を出すくらいで、そこまで強くなさそう。MCU等の映画には未登場なので私は知らなかったのだが、結構歴史あるヴィランらしい。
1話2話で恐ろしいのはいきなりミュータント大迫害展開から始まるところである。シーズン1を経て…というわけではなく、なぜか急加速でミュータント迫害が進んでいる。「人間の友」なる組織が登場し、ミュータント狩りを行い、ミュータントの自宅に火を付けるほどの暴動にまで発展しているのだ。シーズン1の感想で、次々とミュータントが出る構成が少年には堪らないだろうみたいなことを書いたのだが、もうそんなことすら言ってられない。描かれる社会があまりに恐ろしすぎる。こんな中で葛藤しながら悪と戦い続けるX-MEN、そりゃあ大好きになってしまうよ…。
シーズン1は映画でもお馴染みのヴィランが多かったので、知らない奴等がどんどん出てくるシーズン2は更に興味を惹かれた。第3話ではかつてプロフェッサーによって封印されたというシャドウキングなる存在が登場。劇中でもプロフェッサーに封印されたはずでは?みたいな会話がなされるのだが、その辺りはサラッと流される。このアニメは多種多様な出来事が既に起きているという前提の下で展開されるので、自然と悪役もX-MENの顔馴染みが多いのかもしれない。
第4話はオメガレッドなるキャラが登場。これまた知らない。前シーズンに引き続き、X-MENの仲間になりそうでならないギリギリのところを攻めてくるコロッサスと共に、旧ソ連の遺物であるオメガレッドを撃破する物語。知らないミュータントが登場すると背景を知りたくてネットでいろいろ調べるのだが、簡潔にまとまっていてもとんでもない出自や展開がゴロゴロ飛び出してきて面白い。邦訳アメコミは値段が高い上にダイジェスト的になってしまっていて昔きっぱりと別れを告げたのだが、やはりアメコミの物語はどこまでも魅力的である。日本の各出版社がアメコミから手を引いてしまったようなのがつくづく惜しい。
第4話で言うと、チャールズとエリックの台詞で非常に心に残ったものが。モーフに騙されて南極に誘き出された2人は、共に能力を失って南極のアマゾンで襲い来る恐竜たちをかわしながらインディ・ジョーンズもびっくりの冒険を繰り広げる面白アドベンチャーをシーズン中ずっとやっているのだが、力を失い目的を一にし、かつての親友に戻ったかのような2人のやり取りがとにかく微笑ましいのだ。第4話冒頭で助けられたエリックが「私がいなくなれば今よりずっと楽な生き方ができるのに」と語りかけるのだが、それに対してチャールズが「私は楽な生き方を望んでいるわけじゃない。生き方は一つだ。君が死んでも、満足など感じない」と返す。あまりに文脈が詰め込まれすぎているやり取り。この2人にしか出せない空気。エリックの独白じみた言葉に満点の返答をするチャールズ。ちょっとこれだけでもう泣きそうになってしまった。アニメだけなら別に特段この2人の関係性がピックアップされているわけではないのだが、映画等観ている自分にとってはこの2人は何より尊いものなので。アベンジャーズ5でも既存キャストが続投のようなので、これくらい素晴らしいやり取りを見せてほしいところ。
続く第5話が『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』回だった。シーズン1が実写映画の内容ほとんど入っているじゃん状態だったわけだが、ここに来てスピンオフの1作目まで。ウルヴァリンの物悲しさがとにかく伝わってくる回で、彼が様々なものに利用され誰も信じられなくなったという前提を際立たせてくれる。だからこそ、X-MENとして正義のために戦う現代の彼の在り方に余計に感動してしまうのだ。そしてジーンという愛する女性が存在し、彼女がスコットの恋人である事実を無視できない人間味。実写映画でも描かれていた部分だが、より一層彼のことを好きになれる回。シーズン1でも各キャラにフォーカスした回が時折あったが、シーズン2まで来るとそれらの重要性や各シーズンの構成なんかも一通り掴めてきて、更に深くまで物語を味わえるようになった。
第6話はガンビット回。ガンビットは実写映画にほとんど登場しないキャラなのでまるで知らないし、何でトランプなんて変なものを使うんだという気持ちが未だ拭えない。このエピソードでは故郷の兄と再会し、彼の出自が明らかになるのだが、これがまた一段と変なのである。盗賊組合と殺し屋族が二大派閥となっているアマゾンの奥地で、10年毎にエクスターナルなる魔術的な力を持つ神に認められるためにそれぞれが宝を献上し、失敗するとエクスターナルにお仕置きされる…という、何かそれどうにかならないのかというヘンテコな運命を押し付けられているのだ。そして、ベラドンナなる殺し屋族の女性から無理矢理婚姻関係を結ばされるガンビット。ちょっと初情報が多すぎて処理しきれなかったが、これはこれで面白かった。X-MENの出自はとにかく複雑。
第7話、第8話はまたもや未来から過去改変のために展開される物語。『フューチャー&パスト』は何度やっても旨味がある。前回過去改変を完遂できなかったビショップが再度過去に戻り、X-MEN達のウイルス感染を防ぐことに成功するのだが、それにより後年必要となるウイルスの抗体が作られず、世界が荒れ果ててしまう…というのが第7話。ウイルスを止めなければウイルスを使って世界に混乱をもたらそうとするアポカリプスの計画が遂行されてしまい、ウイルスを止めればそれはそれで世界は滅んでしまう。真実を知ったケーブルがビショップを止めるために過去に戻り、ウルヴァリンの治癒能力を利用して抗体を作ることで世界を救うのが第8話。ケーブルって未来の人間だったのか。シーズン1では普通に現代に登場していたような気が…と思いいろいろ調べたのだが、混乱してきたのであまり深く追わないことにした。シーズン1の時も別の未来から来ていたということなのだろうか。何か見逃したか…。これからのアニメで語られるのか、もう既存設定として組み込まれているのか分からないのがこの作品の辛いところである。
第9話はローグの過去が明かされる。シーズン1最終話でミスティークを母親と呼んでいることに驚愕したが、実の親子ではなかったらしい。父親から迫害を受けたローグが家を飛び出して辿り着いた先がミスティークの下で、彼女を母親のように慕っていた様子。しかしミスティークはローグの力を利用してミズ・マーベルを倒そうとしており、ミズ・マーベルに長く触れさせることで彼女の力を吸収させることに成功。触れた相手の力を吸い取るだけにしてはやけに強いし何で飛べるんだローグはと疑問だったのだが、ミズ・マーベルから力を奪ったために彼女の能力を扱えるようになったというのが真相らしい。しかし副作用でミズ・マーベルの精神がローグの精神に入り込んでおり、無理矢理力を奪われた彼女と脳内世界で戦うことになる。迫害からの裏切り、そして人には触れられないまま…というのが何とも悲しいローグ。実写映画を知る身だとミスティークは結構魅力的なキャラクターなのだが、アニメのミスティークは真っ当に悪党をやっているらしい。
第10話は遂にビースト回。シーズン1ではモーフほど邪険に扱われなかったものの、まるで役者の事情でもあったのかと思うほどに、政府に捕まり活躍の場がなかったビースト。オープニングでしか彼の大暴れを堪能できないなんて、こんなに悲しいことはない。しかしシーズン2では晴れて自由の身となり、主役回が作られるほどに。しかしX-MENの物語はどこまでも悲しいのである。目の見えない女性と愛し合いながらも、ミュータント嫌いの彼女の父親のせいで2人は引き裂かれてしまう。ビーストという名の通り、美女と野獣エッセンスがとにかく強くなりがちな彼だが、この回では父親とも和解し、ミュータントを迫害する「人間の友」も追い詰めることができ、めでたしめでたし。「我々の努力が実り、世の中が変わる日がきっと来る」という言葉が切なすぎる。
第11話はモジョーが登場。モジョーを別に知らないのだけれど、あまりの強烈さに無理矢理頭にインプットされた。宇宙(異世界?)でコロシアムのような過激なTVショーを開催しているモジョーが地球のX-MENに目を付け、彼等を誘拐してとんでもないテレビの世界に放り込む。滅茶苦茶な回だが、逆にこの作品の振れ幅を感じるようで面白かった。急なスケールの違いをぶち込めるのはアメコミのいいところ。
クライマックスの12話13話は遂にシニスターとX-MENが激突。ここまでずっとチャールズ抜きで戦ってきたX-MEN。いや別にチャールズ要らなかったかもしれない。結構いろいろやれていた気がする。ラスト10分になってもピンチが覆らないので、これどうするんだ…とやきもきしていたら、ウルヴァリンとターザンみたいなキャラクターが組んで秒で状況を収束させた。X-MENはやっぱり能力を奪われたらキツイな…という感想。1話目からシニスターを出して壮大な物語を予感させてくれていたし、毎話挿入されるチャールズとエリックの冒険譚も面白かったので、それなりのクオリティのラストを期待していたのだが、割と呆気なく終わってしまった。前後編もちまちまあったおかげでクライマックス感も薄い。多種多様なミュータントが登場することには素直に興奮するし、X-MENの切ない心情や壮絶な過去にスポットが当たるとより一層キャラクターが魅力的に見えるのだが、クライマックス感や伏線回収的な面白さがあまり感じられないのがこのアニメの痛い所。とはいえ、それらがなければ面白くない、というタイプの作品ではないので全然観られるのだが。
モーフの再登場、ビーストの活躍、ウルヴァリンの過去などなど、見応えある部分も多かったシーズン2。1話完結エピソードはきちんと心を満たしてくれるし、2話連続回はスケールの大きさを感じられて純粋にワクワクさせてくれる。シーズン3以降もこの観心地が続くなら相当楽しめそうである。早くもアメコミアニメの勢いをかなり楽しめている自分がいて、ディズニー+で配信されているアベンジャーズなどのアニメにも手を出したくなってきているが…。MCU制覇が目標なので一旦はそちらに集中したい。でもマルチバース・サーガである以上どこから何が飛び出してくるか分からないしな…という気持ちもあり、余裕があれば配信されていて視聴が容易なものは抑えておきたいところ。個人的には昔ケーブルテレビで観続けていた2000年頃のスパイダーマンのアニメが観たいのだが、これは配信されていなかった。