映画『シーサイドモーテル』評価・ネタバレ感想 群像劇弱めの良質コメディ

シーサイドモーテル

 

2010年公開の、山奥に建っているシーサイドモーテルに宿泊した人々の群像劇コメディ。監督は『仮面ティーチャー』などの守屋健太郎。原作は岡田ユキオの漫画『MOTEL』で、無料で読める2話までを読んでみたがほとんど内容は映画の冒頭と同じだった。しかも全12話らしくとっつきやすい。おそらく単行本1冊程度の内容だと思うので、100分の映画にするにはちょうどいい題材と言えるかもしれない。ただ、映画は4部屋それぞれの物語が交差し合うという構成でありながら、各部屋の関係性は非常に薄く、それぞれが別の部屋の都合のせいで勘違いを起こしたりする程度のもの。各部屋のストーリーは良質な短編なのだが、群像劇としての満足感は非常に薄くなってしまっているのが残念。勝手にダイナミックな展開を期待してしまったこっちも悪いのだが、もう少し部屋同士の交流があってもいいように感じられた。

 

ぼったくりクリームの営業に疲れ部屋を間違えた風俗嬢に恋する生田斗真。妻を追い出すことに成功し風俗嬢を部屋に呼ぼうとするも妻が事故死したと告げられ失意に暮れる古田新太。恋人との旅行中に親友の借金取りに捕まってしまう山田孝之。半年間追いかけ続けたキャバ嬢とゴールインしようと企む池田鉄洋。令和8年の今でもキャストはとにかく豪華で、特に当時の生田斗真の顔の良さは凄まじい。これに加えて麻生久美子や玉山鉄二や柄本時生や温水洋一まで出演している。山崎真美も懐かしい。俳優陣は令和でも通用する鉄壁の布陣と言えるかもしれない。だからこそ、ストーリーにももう少し大きな展開を期待してしまった。

 

古田新太が呼んだ風俗嬢(麻生久美子)が部屋を間違えて生田斗真と出会う、山田孝之が男が5人部屋の前を横切ったら解放すると賭けに出るも5人目が女装した古田新太だったために有耶無耶になる、警察を呼ばれたと勘違いした玉山鉄二が山田孝之を毒薬で殺害してしまうが実はぎっくり腰になった池田鉄洋の元に駆けつけた救急車だった…などなど。各々の部屋の出来事が噛み合っていき別の部屋の状況に影響を与えていく様は面白いものの、それらの事象が決定的でない点が微妙。「なるほどそういうことだったのか!」と驚くような仕掛けがなく、コメディとして各部屋の接合が消費されていくためにどうにもボルテージが上がらない。一応最後の最後に、生田斗真の部屋に戻ろうとした麻生久美子が山田孝之達の車と衝突し約束を果たせなくなる…という悲しい展開はあるのだが、クライマックスとしては物足りない。

 

それぞれの部屋のエピソードはちょっとした小話として面白かったと思う。特に「浮気しないように」と妻に厚化粧をされた古田新太が妻の死と浮気を知ってなお化粧を落とさずにいる姿は情けなくも物悲しく、非常に良かった。玉山鉄二がラストで「猫祭りに行きたい」と言う成海璃子に「夏のドラえもん祭なら連れてってやる」と親友の山田孝之と同じ言葉を返す辺りも上手い。

 

ただ、色に狂う話が多すぎる気もしている。原作が青年漫画だから仕方ないのかもしれないが、生田斗真は風俗嬢の麻生久美子に翻弄され、古田新太も風俗嬢を部屋に呼ぶために妻を追い出し、池田鉄洋はそもそもキャバ嬢と寝るためにわざとシーサイドモーテルに宿泊している。4部屋中3部屋が恋や性愛にまつわる話になっており、多様性が失われているのが残念。キャラは立っているし有名俳優が演じているので混同するようなことはないのだが、どうせ部屋同士の関係性がほぼ独立しているのならもっとバラエティ豊かな構成でも良かったのではないかなとも思う。

 

くだらないギャグがなかったのは好印象。過度なアップやスローモーションなどの演出で誤魔化そうとしたり特徴的なBGMで強引に場を盛り上げたりするような手段を取っていないのは凄くよかった。力業で笑わせてくるコメディが苦手なので、あくまで演技力や展開で笑いを生もうとしていた創意工夫には好感が持てる。そして役者の演技力を強く意識した作劇が上手い具合にリアリティに繋がっており、安心して観ていられる映画だった。エピソードには人情味もあるため、簡単にはつまらないと言えない映画になっていると思う。オチで警官がキャバ嬢に手を振っているが、その手が犬に噛まれて包帯が巻かれている…という流れも見事。生田斗真の淡い恋心も見どころがあるし…と挙げていくと何だかすごく良い映画にも思えてきた。設定から入って期待し過ぎただけなのかもしれない。でも、もう少し凝った群像劇になっていたらより楽しめたかなと。原作付き映画にこういうことを言うのも野暮かもしれないが。