アントワーン・フークア監督作品をどんどん観ている。2003年のブルース・ウィリス主演作『ティアーズ・オブ・ザ・サン』。上の画像を見てもらえれば分かる通り、現代をそのままカタカナにしている。なぜかフォントもダサい。内容も全然伝わらない。もう少し日本の配給会社に頑張ってほしかったところ。というか直訳すると『太陽のナミダ』でNEWSの曲が頭に流れてきてしまう。そんなふざけた感想では許されないほど、映画の中身は陰惨な戦争映画なわけである。ナイジェリアの内戦に巻き込まれた白人医師を救うために派遣されたブルース・ウィリス演じるウォーターズ大尉の部隊。しかし医師のリーナは怪我をした現地人を置き去りにして自分だけが助かることを拒否。一度は彼女を騙して強引に救助しようとするも、戦地の惨状を目の当たりにしたウォーターズは命令を無視して取り残された現地人を救おうとする。当初はヘリに数人乗せて帰還するだけの簡単な任務だったはずが、情を出したことで結果的に現地の反乱軍に追われることとなり、犠牲者まで出てしまう羽目に。
正直、アメリカ称賛映画というか、アメリカ万歳の意味合いが強すぎる感があり、これまでのフークア作品ほどはのめりこめなかった。フークア作品の良さは地味ながら着実に面白さを積み立てていく点にあると思っていたため、いきなり国際規模の物語が展開されることにも戸惑ってしまった。これは単にフークアが『トレーニング デイ』などで幅広く認められた結果、大作を任されたということでもあるのだろうが。ただ、アフリカ国家の反乱軍を徹底的に悪者として描き、蹂躙されるキリスト教徒へ同情を向けるという一方的な眼差しは、もう少し工夫しても良かったのではないかなと。2000年代とはいえ、世界情勢を鑑みれば、悪徳政治家による独裁を糾弾するための反乱軍やゲリラ部隊というほうがイメージしやすい。本作では殺された元大統領は民主主義を目指していたと語られ、本当に単なる悪人達が武装してクーデターを起こしたという、なかなか受け入れづらい設定になっている。少し調べた限りだが、ナイジェリアではビアフラ戦争という有名な内戦が起きていたらしい。1967年から1970年にかけて行われたこの戦争は、映画にも登場したキリスト教主体のイボ人がビアフラ共和国として分離独立を図り、それを認めない政府との間で起きた戦争であるとのこと。イボ人が政府により弾圧を受けたという点は共通しているが、映画と内戦の構図は全く異なっている。完全に歴史通りというわけにはいかなかったのだろうか。
ただ、日本語版のWikipediaにはこのような記載もあった。
この映画の批評の中には、「反乱軍を悪者に描き、キリスト教、米軍称賛映画だ」という主張がある。劇場未公開シーンが追加されたバージョンでは反乱軍側の民族がキリスト教系イボ族に虐殺された経緯も描いており、また反乱軍が使用している武器にはM16やM1911A1、M9といった米軍が政府軍に支給してきた武器を奪ったものも含まれるといった表現もあったが、劇場公開版ではカットされている。
もしかするとフークア監督をはじめとした製作陣は反乱軍を単なる悪人として描くのではなく、しっかりとバックボーンを与えたいと考えていたのかもしれない。もちろん真相は分からないのだが、未公開シーンということであれば上層部からの圧力で消えたということも考えられるため、やはりハリウッド的だなあとは思ってしまう。
一方で、戦争の悲惨さは鋭く描けていた。冒頭からして足を失い歩けなくなった怪我人達の傷跡をしっかりと映し、人々が軍人達に殺されていく様も決して手を抜かない。一番苦しかったのは中盤で、襲撃に遭った村で乳房を切り落とされた女性が登場するシーン。レイプに勤しむ反乱軍も本当にクソなのだが、胸が欠け、赤ん坊も死に至り、本人も痛みと苦しみで涙を流している姿は本当に観ていて胸が締め付けられた。赤ん坊を育てられないようにするために乳房を切り落とすと説明されていたが、実際の戦争でもそういうことがあったのだろうか…。戦争の負の部分から決して目を背けず、痛みや苦しみをしっかりと描いている点は非常に好感が持てる。
実際の国際情勢云々を抜きにすれば良い映画になるかというと、そういうわけでもない気がしている。当初リーナを騙して彼女だけを救助したウォーターズ大尉が、惨殺された村人たちの姿をヘリから見て、戻れと命令する場面。確かにより多くの人を助けられるし、その行動が正解であるとは思うが、一度反乱軍を撒いた時に彼等が村へ行くことはリーナも指摘していたし、想像できていなかったはずはない。それなのに実際に人の死を目の当たりにして突然思い立ったように正義に目覚めるというのはどうなのだろう。それほどの正義感の持ち主ならば最初からもっと大勢を助ける判断をしてほしかった。彼の心変わりの決め手がイマイチ分からない。また、仲間の米軍もほとんど深みがなく、ウォーターズ大尉に従う部下以上の属性を感じることができなかった。「俺もアフリカ人だったので…」と最後にかっこよくキメる部下も決して悪くはないが、そんな通り一遍の台詞をラストにどんどん出されてもなあと。要は人物描写がほとんどできていない映画なのだと思う。戦争の悲惨さに真正面から向かっていった割に、映画としての良さや面白さはほとんど存在していない。その空虚さも「アメリカ映画の空気感」に加担している気がする。悪い出来というわけではないし、ちゃんと戦争の恐ろしさは伝わってくるが、色々とモヤモヤしてしまう映画だった。


