映画『モータルコンバット』評価・ネタバレ感想 真田広之がかっこよすぎる

 

モータルコンバット(字幕版)

 

ここ10日ほどで1990年代の『モータル・コンバット』2作を鑑賞し、その直後に観たため存外にテンションがぶち上がってしまった。ついこの前までゲームであることすら知らなかったくせに、である。90年代の拙いVFXで頑張って表現されていたキャラクターがこんなにも生き生きと動き美麗な技を放っているのだから、興奮するなというほうが無理である。リュウにソニアにスコーピオンにジャックス、過去映画に登場していたメンバーはもちろんのこと、映画初参戦のキャラもとにかく馬鹿馬鹿しくて面白い。そりゃあ今すぐ誰かに薦めたくなるような代物ではないのだが、自分一人で手を叩いて楽しむくらいにはやはりこれくらいのボンクラさが丁度いいのである。

 

本作の主人公はコール・ヤング。どうやらゲームには登場しないオリジナルキャラらしい。通りで映画しか知らない私が知らないわけである。むしろ誰も彼を知らなかったのだ。闘技場で金を稼ぎ家族を養う彼だったが、突如魔界の住人達との戦いに巻き込まれ、家族と世界を守るために敵と戦うことになる。黄金の鎧とトンファーを武器として戦う姿は他のキャラに比べてやや地味なのだが、主人公としては充分な風格。実は彼は17世紀にサブ・ゼロに敗れて命を落としたスコーピオンの子孫であり、その一族は生まれつきモータルコンバットの出場者の印である龍の形の痣を持って生まれてきていた。つまり彼が戦うことは運命だったのである。しかし凄いのは、「彼が絶対に必要だ!」となる瞬間が映画に訪れないこと。普通こういう場合は主人公の特異性を際立て、その覚醒が物語の鍵になる。しかしコールは序盤ずっと負け続きで、能力もしょぼい。戦う運命にあったとはいえ、彼でなければ勝てない相手との勝負だったかというと微妙なところである。闘技場でも相手に敗北し、サブ・ゼロに襲われた際はジャックスに助けられ、ゴローとの戦いで家族がピンチに陥った際にようやく白星を手にする。

 

これは何もコールに限ったことではない。この映画の前半はとにかく人間側の弱さが際立っている。コールの敗北や逃走もそうだが、ジャックスも結局サブ・ゼロとの戦いで腕を失ってしまうし、拠点が襲撃された際もほとんどのメンバーがボコボコにされる。唯一黒星をあげたクン・ラオもその後殺されてしまう。過去映画では特殊能力を持たない人間でも充分に通用するレベルの魔物達だったが、本作では全体的にギリギリのバトルであることがしっかりと示される。だからこそ、人間側には奥義の修得が必要なのである。この奥義の設定が秀逸で、春巻きをよこせとブチギレた結果目から光線を出せるようになったカノウもいれば、妻と娘を守ろうとして覚醒を果たしたコールもいるという絶妙な面白さ。ギャグの役割も果たしつつ王道の燃える展開としても扱われており、やはり「必殺技」の存在は戦いにおいて非常に意味合いが大きいなと実感した。機械の両腕を手に入れたジャックスがソニアを救うために覚醒するのも素晴らしい。前作では魔物との戦いなど関係なくなぜか手に着脱可能なメタルアーマーを着けている奇妙な男だったので…。

 

そしてアクションも見事。まず最初のスコーピオンの動きからして度肝を抜かれる。真田広之がかっけえということもあるのだが、アクションの俊敏さからして本格的で、スコーピオンが石に頭を打ち付けられるシーンでバッと血が噴き出しつつもそれをわざわざアップで見せないカメラワークが秀逸だった。他のシーンでもゴア描写は満載なのだが、それらを「ほらほら今グロいことやってますよ~」と見せびらかすこともせず、サラリと人体破壊を演出する在り方がかなりツボ。サブ・ゼロの氷の表現も、よくある透明な氷に人が入っているようなものではなく、無数に氷柱が生えたような刺々しい質感で、痛みやサブ・ゼロの冷酷さをうまく表していた。何よりラストのスコーピオン復活が素晴らしく、自分と家族を屠った因縁の敵であるサブ・ゼロと再び対峙する姿が非常にかっこいい。洋画での真田広之はイマイチパッとしない役も多いのだが、これは本当に真田広之を真打として打ち出してくれている点も評価できる。

 

一方で、やはり負け続きが多い展開は気になり、各々が奥義を身に着けた後の最終決戦も、どうして勝てたかの根拠が薄くなっているのは残念。序盤できちんと敗北を描いたのだから、綿密な作戦を立てたり奥義をド派手に演出したりと、やりようはあったはずである。序盤で溜まったフラストレーションを覆すほどのインパクトが後半になかったように思う。また、最後のサブ・ゼロ戦も、序盤であんなにかっこいい真田広之を出されたらそりゃあテンションは上がるのだが、それはそれとして主人公のコールにとってはご先祖様とはいえ初対面なわけで。せっかくの共闘なのに盛り上がるようなやり取りができていなかったのも残念。また、コールも奥義を身に着け、他のメンバーも各々の戦いを終わらせて全員集合できる…というタイミングで結局美味しいところをスコーピオンが全て持って行ってしまっていた。スコーピオンは確かにかっこいいのだが、それはそれとしてここまで頑張ってきたメンバーを疎かにしていないか?という疑問は残る。

 

結果的にはかなり楽しめたほうなのだが、色々と惜しいなとは感じてしまった。こんなに変なボンクラ映画なのだから、もっとハジケてよかったはずなのに…。小さくまとまってしまったなという印象がある。とはいえそれらを上回るかっこよさ、瞬間最大風速的な面白さは随所に見られたので、いよいよジョニーが参戦するという今週公開の続編には大いに期待したい。