期待通りの面白さ。タイムループコメディの人気作としてよくサブスクのオススメには出てきていて、評判が高いのも知っていたのだけれど、映画を観てビックリ。規模やキャストからしてかなりの低予算だとは思うが、脚本の鮮やかさに舌を巻いてしまった。無限に続く1週間のタイムループをどうにか部長に気付かせようと奔走する姿が笑えて泣ける、素晴らしい作品だった。
タイムループ自体に気付かない上司がいるという設定を聞いた時にはピンと来なかったのだが、映画を観て合点がいった。社員達は夢と同じように前ループのことを完全に忘れたまま月曜からのループを繰り返しており、たまたま気づけた新人らしき2人からスタートして、上申制度のシステムで下の役職の者から1人ずつ上司にループを気づかせていく…という筋書き。劇中の吉川と同様、私も説明を聞きながら回りくどいなあと思ってしまったのだが、いきなりタイムループのことを直訴しても相手にされないという描写が差し込まれることで、このシステムに妙な説得力が生まれていた。どうにか上司の機嫌を取るコミカルさだけでなく、タイムループものあるあるな、ルーパー故に起きることを熟知していて対策を立てている的な描写も絶妙なテンポで展開され、コメディとして本当に申し分ない出来。
私が一番笑ったのは、残すところ部長にタイムループを気づかせるのみ…という段階でのプレゼンシーン。部長の次のセリフがいちいちスライドになってる面白さとSEのタイミングがバッチリとハマっていて最高だった。家で観て大笑いしてしまったので、もし劇場で観ていたら笑いを堪えるのに必死だっただろう。ほとんど1つのオフィスだけで話が進むのに、納期に追われて徹夜を繰り返す苦しみや、取引先に無理難題をふっかけられて焦る姿が正に会社員あるあるで、スケールの小ささが逆に親近感に繋がってるのも上手い。あれくらいの規模の職場でわちゃわちゃ会話しながら仕事をするのが結局楽しいんだよなあとつい思ってしまうし、画面から伝わってくる楽しさが物語の帰結にも結びついていて、すごく完成度が高いように感じられた。
結局のところ最初の目的であった部長のパワーストーンは何の関係もなく、タイムループの原因は部長が完成させられずにいた漫画にあった。過去に部下の尻拭いをしたことで中途半端になっていたその漫画を完成させ、出版社に送ること。それこそがループを閉じる方法だと気付いた社員達は一丸となって漫画に取り組む。しかし主人公の吉川だけは引き抜きや将来のことが気がかりで、仕事を疎かにできず、漫画に取り掛かる暇がない。結果的に彼女は納期に間に合わせることができず、スカウト先でもある取引先に赴くことに。そこで目の当たりにしたのは、憧れていた女性のパワハラ気質な働き方だった。
彼女と働くことを目指していた吉川だったが、実際に彼女と会ったことで目が覚め、仕事を捨てて社員達と漫画に勤しむようになる。ループを抜け出すために奔走し一丸となっていく彼等の、どこかループ自体を楽しんでいるような輝かしい姿が、パワハラ気質で他人を尊重しない働き方との対比になっており、素直な作りながら感動させられた。バンドマンを目指して何度もタイムループするという設定の部長の漫画も物語にリンクしていて、最後には狐についていかずループを閉じて孫と凧揚げをしたいと話す男のコマも印象的。夢も大切だが、それ以上に仲間や家族などの身近な人達と過ごす喜びを噛み締められる素敵な映画だった。
82分という上映時間のため大どんでん返しや衝撃的な展開を求める人には向かないかもしれないが、この短さで笑って泣ける見事なコメディになっているのは本当に見事。民放でスペシャルドラマとして放送しててもいいくらいの出来である。部長にループを気づかせるというゴールのために、上司を一人一人懐柔していくミッションが発生し、それがまたコミカルで面白い。筋書きやテーマも分かりやすく、観ていてストレスを感じる瞬間がないのも好印象だった。音の使い方も巧みで、特にlyrical schoolの楽曲の使い方は最高。明るいヒップホップが映画の世界観ともマッチしている。
ここまで面白いなら竹林亮監督の他の映画にも手を出したかったのだが、現在サブスク配信はないらしい。しかしどれもかなり評価は高い。2026年公開の『KILLTUBE』なるアニメ映画の脚本にも関わっているらしいので、この作品も期待できそう。『MONDAYS』は評判を聞いても後回しにしてしまったが、やはり面白いと耳にした作品は早めに観るべきだなと痛感。なぜなら面白いのだから…。

