宇宙を題材にした作品としては6作目で既に2作目なわけだが、本作は『宇宙開拓史』とは異なるアプローチで、「特撮映画」への愛やオマージュに溢れている。何よりタイトルが『スター・ウォーズ』なわけで、実際映画のストーリーも体制に反旗を翻し玉座を取り戻すという意味で、かなり『スター・ウォーズ』に近い。特撮好きの私としてはスネ夫達が自分達だけの力でアクション満載の特撮ビデオを撮ろうとしているところにワクワクさせられるし、あらゆる映画オマージュを盛り込んだオープニング映像も観ていて楽しい。あんなに自然にR2-D2とC-3POを出していいのかと驚いてしまった。そもそも『ドラえもん』の映画自体が人によっては初めての映画館体験になることも考えられるわけで。そんな中でたくさんの映画オマージュをするということは、子ども達を映画の世界へと導く役割もあるということだろう。話は王道ながら、仕掛けや演出はなかなか奥が深く、これまたかなり楽しめる1作だった。
今回のゲストキャラクターはピリカ星の大統領・パピ。そして彼を支える犬のロコロコ。幼いながらに大学を卒業して大統領となったパピだったが、ギルモア将軍の反逆に遭い、命を狙われる羽目に。仲間達を置き去りにして自分だけが地球に逃げて来たことを後悔する彼が、しずかちゃんが人質になった時に自ら人質交換を願い出るのが素晴らしい。その後ギルモア達に捕まっていたせいでのび太達との交流はそこまで多くなかったものの、彼の境遇を考えると深みのあるシーンだと言える。お喋りな犬のロコロコ(なのに自分のことを無口だと思っている)も、活躍こそ少なかったがやはりペラペラと喋ってくれるキャラクターは貴重で、シリアスな物語の緊張感を緩和してくれるいいキャラだった。うるさすぎて周りからちょっと距離を置かれているくらいの塩梅も上手い。いかにもかわいいというデザインではないが、小さい子に好かれそうな魅力がある。
一方で敵側のギルモア将軍とドラコルル長官については、キャラデザもシンプルな悪役といった具合で、服装も軍服なためビジュアルが印象に残りにくい。複雑な思想を持つわけでなく、純粋にピリカを征服しようという悪人なので、正直観て数日もすれば特徴を忘れてしまいそう。この2人が特別強いとか、何か能力を持っているというわけではないのも厳しい。単純に軍人や独裁者としてのカリスマ性にキャラクターが依存しているわけだが、その部分があまりこちらに伝わってこず、単に「敵」という印象しか持てなかった。他作品の悪役のような圧倒的な強さもないため、ちょっとインパクトが薄い気がしている。
じゃあその分この映画は何にリソースを割いていたかというと、「ミニチュア特撮」である。冒頭、スネ夫達とのび太達がそれぞれ映画作りに励む部分だけでワクワクするし、その後もピリカ星人に合わせてスモールライトで小さくなったのび太達の大冒険が、特撮映画のスケールになっていて非常に楽しい。プラモデルの戦車を改造して宇宙空間でも戦えるようにするというアイデアも良く、しずかちゃんとスネ夫が敵船とバトルするシーンはなかなかの迫力。背後から攻撃されたスネ夫が振り向くカットがかなり好きだった。というか、この映画は中盤でのスネ夫推しっぷりがいい。子どもながらに戦争を目の当たりにして怖気づいてしまうスネ夫の生々しさは共感できるし、それに対してしずかちゃんが「やるしかないじゃない!」と戦車に乗り込む強さを持ち合わせているのも凄い。彼女を追いかけて戦いに出るスネ夫の勇気も、結構感動してしまった。何より、スネ夫としずかちゃんという組み合わせが珍しくて面白く、もう1グループのジャイアン・のび太・ドラえもんというメンバーも何だか貴重。すやすやと眠るのび太をジャイアンとドラえもんが見守るシーンは、新鮮な暖かみがあった。
スモールライトを奪われて小さいまま(ピリカ星人と同じサイズのまま)戦うことを余儀なくされたのび太達だったが、最後はスモールライトの効果が切れて元の大きさに戻り、実質巨大化。ピリカ星人の小さな街を巨大なしずかちゃんが闊歩するシーンは『ウルトラマン』のフジ隊員が巨大化した時のような面白さがある。というか、あれのオマージュかもしれない。効き目が切れただけという偶然性が何とももどかしいが、ミニチュア特撮にオマージュを捧げたこの作品のラストが巨大のび太達で締めくくられるのはかなり良かったのではないだろうか。全体的にはエンタメに振り切っている感もあって、心を大きく動かされるということはなかったのだけれど、たくさんの映画オマージュは、少年心をくすぐられるような面白さに満ちていたと思う。

