オリバー・クイーン、お前は俺ではない何かになる前にトミー・マーリンに謝る必要がある。海外ドラマ『アロー』のシーズン1におけるMVPは間違いなく親友の彼だからだ。島にいた5年間…もとい、しばらくサブスクから姿を消していた『アロー』がU-NEXTで配信開始されたのが2025年の12月。複数のドラマが並行して進むという前代未聞のドラマシリーズ、アローバースに私は度々挑んでいるのだが、いつも途中で止まってしまう。理由は簡単、長すぎるからである。ちなみに最長記録はアローのシーズン4まで。なるべく放送順に観たいため、フラッシュやスーパーガールなども並行させ、しかもアメリカでの本放送と話数を完全にシンクロさせたいがために、Wikiを参照しながら世の中に出たエピソード順に複数のドラマを観ていた。これがなかなかの苦行。放っておけばエンディングも飛ばしてくれるサブスクを一旦止めて、別のドラマに切り替えるというたった少しの苦労が少しずつ心の負担になっていくのである。おまけにアローバースの終盤は日本語で観ることが不可能という状態であり、今から再度視聴を始めるにはかなりハードルが高いシリーズではあるのだが、DCの映画シリーズがリブートされたことや、今年の年末に『アベンジャーズ』の最新作が控えていることなど、世に再びアメコミブームが訪れる予兆を感じ取り、視聴するなら今しかないと無鉄砲にも飛び込んだ。1日2話ペースで続けていく予定だが、それでも全て視聴するのに1年ほどかかるらしい。何たる壮大なプロジェクトだろうか。
全部に感想を書けるかは分からないが、海外ドラマの内容なんてすぐ忘れてしまう自分のためにも、備忘録としてブログにいろいろ書いていきたいと思う。今回は区切りの良いアローのシーズン1。豪華客船が難破し、死んだと思われていたオリバー・クイーンが生きていた。彼は5年もの間無人島で過ごしていたのだ。しかし、彼は5年前の彼とは違う。かくして、亡くなった父の遺志を継ぎ、島で培った戦闘スキルを活かして、街を穢した者達を粛正するダークヒーロー「フードの男」が誕生したのである。MCUやDCEUとは違う、地に足の着いたリアル調の物語。アメコミ作品が覇権を握っていた10数年前、少し遅れて登場したこのドラマはその後、複数のドラマが並行して物語を進めていくという、MCUをテレビ放送で行うような突拍子もない試みを見事成功させていく。ヒーロー作品の全盛期ということを鑑みても偉大な功績。しかしその功績ゆえに長大な物語は、後から参入する者のハードルを高くしている。ましてアメコミ疲れが叫ばれる昨今では、今からアローバースを観てみようという人は少ないはずだ。だが、だからこそ歴史は語り継がねばならない。アローバースがどれだけ凄い作品なのかを、観た者が後世に語り継いでいかねばならないのだ。ということで、これからMCUに熱狂した、いや今も熱狂させてくれると信じているライトなアメコミ作品ファンとして、アローバースを観ていこうと思う。今回は挫折したくない。
ここまでアローバースの凄みを話しておいて恐縮なのだが、正直このアロー/シーズン1はほとんど面白くなかった。『ダークナイト』に影響されたというリアル調のダークヒーロー路線、好きな人は好きなのかもしれない。しかし私はおそらくアローバースとして長期シリーズ化しているという事実がなければこのシーズン1で切っていただろう。これからキャラが増えてどんどん面白くなるし、『フラッシュ』などを観るためにもアローを観なければならないという、続編が存在する故の評判が、私とアローをぎりぎりで繋ぎ止めている。ではどうして面白くないと感じてしまったのか。それは単純に、人間関係のいざこざが多すぎるのだ。
島から帰還したオリバーだが、失踪のきっかけとなった豪華客船には何と恋人の妹を連れ込んでいた。当時それを知った恋人のローレルのショックは大きく、恋人と妹を同時に失い、5年の間に彼女はオリバーの親友であるトミーと付き合うようになる。まずこれが気まずい。せめてオリバーが妹(サラ)を連れ込んでいなければ三角関係が発動してしまう…くらいの気まずさなのだが、元々のオリバーがあまりにクズなのでまったく擁護できない。そして刑事であるローレルの父親も当然サラを殺したオリバーを憎んでおり、ローレルとオリバーが再び仲を深めていることが認められない。
オリバーの母親であるモイラは夫の死後別の男性とくっつき、妹は薬物中毒。仲間になった元軍人のディグルとも見解の違いで度々揉めてしまう。おまけにオリバーがフードの男である事実は彼にとってトップシークレットであるため、嘘をつき家族と喧嘩になることもしばしば。父親から託されたリストに載った名前の人間を粛正していくという単純なミッションだったはずが、母親も関わっていた陰謀に巻き込まれ、プライベートとヒーロー業の両立も全然うまくいかず、ヒーローチームとしてもちゃんと機能させられず、とにかく観ていてフラストレーションが溜まる展開が多すぎる。オリバーにとっての最大の味方がいないし、そもそもオリバーがクズなのでオリバーを肯定してくれるキャラが出てきても厳しいという難しさ。おまけに並行して描かれる島での出来事はほとんど現代編と乖離してしまっていて、並行して描かれる意味合いがあまり伝わってこない。ショーランナーはこれに関して「1つのドラマに2つの物語が存在している」というポジティブな発言をしているが、相互作用が生まれないドラマを並行して描かれるのは個人的にはストレスだった。島でのこの出来事が現代にこう繋がるのか!というのがシーズン1にはほとんどない。
そもそも、どういうドラマなのかというのも曖昧なのである。街を守るダークヒーローというのは分かるのだが、オリバーの使命は元々リストに名前のある人間を粛正すること。しかし時にはスターリングシティに蔓延る野良の犯罪者を取り締まることもある。だが、リストの人間は大概がただの悪い権力者なので、オリバーが粛正に苦労することはほとんどない。「お前は街を穢した」と添えて弓を放てば概ね解決なのである。しかし刑事に正体がバレそうになったり家族との問題を優先させたりして、それがうまくいかないという展開が多く、オリバーの真の敵は自分がフードの男を完遂できる状況作りになるパターンが多かった。正体を隠しての二重生活はどうにもうまくいかないぜ…やれやれ…というのをリアル調にやっているところが自分の中で全然ハマらず、正直ほとんど面白味を感じられなかった。
結局のところ、ヒーロードラマなのに自分より強い敵やライバルと戦うことよりも、ヒーロー活動に徹することのできる状況を作り出すことのほうが難しいという話になっている。リストの名前を1つずつ消していくという分かりやすい展開もできただろうに、話があっちこっちに飛ぶ上に過去編まで並行してしまうために、非常に観づらい。人間関係もグッと進んだかと思いきや巻き戻ったり…というのを繰り返しているので、ああどうせまた内輪揉めが始まるんだろうなあとガッカリしてしまう。序盤からずっと間延びしているように感じられてしまうのだ。描きたいものがよく分からなかったし、こっちとしてはもっとバトルが見たかった。だからこそ、オリバーがいきなり敵を追ってパルクールを始める回なんかは本当に最高。ドラマは割と一本調子なのに、アクションは見応えたっぷりなのである。
とはいえ、2クールの海外ドラマは基本的に中弛みが当たり前。肝心なのは終盤である。そして終盤にこそ、このドラマの真価が発揮される。そう、ラスト5話をかけてトミー・マーリンを精神的に追い込んでいくのだ。
親友のオリバーが亡くなり、その後を継ぐように彼の恋人であったローレルと付き合うようになり、オリバーが帰ってきたことで嬉しさと悲しさが半々だったであろうトミー。しかも中盤ではシーズン1のラスボスである父親マルコム・マーリンから勘当されてしまう。親友のオリバーを頼ってクラブ経営の仕事をもらうが、彼がフードの男だと知ったことで更に葛藤を募らせる。おそらくこの辺りで、トミーからオリバーへの感情が明確に嫉妬に変わっていってしまったのではないだろうか。薬物の取引があったことでクラブ経営に口を出されたトミーは「経営者は俺だ」とオリバーに反抗するが、彼から「過去のお前を知っていたら疑って当然」というようなことを言われてしまう。5年間でオリバーは明らかに別人になったのに、自分はずっと変われていないという劣等感を刺激されオリバーと絶縁。父親に頭を下げて彼の会社に勤めるようになる。それでもスターリングシティに住む以上オリバーとの接触は避けられず、彼がローレルを守る姿を見て、隠し事をしたままローレルと生きることはできないと悟り、彼女に別れを告げる。恐ろしいほどの負けヒロインっぷりである。
その後オリバーからアドバイスを受けローレルと再度向き合おうとするが、窓の外から2人のキスシーンを目撃してしまう。最悪。これは完全にオリバーが悪い。これならいっそどこか冴えないトミーが裏でダークヒーローをやっているが故にプライベートでいいことがない…みたいなコミカルな物語のほうがよかった。どうしてオリバーばかりが何でも手にしてトミーが全てを捨てなくてはならないんだ。しかし、ドラマは絶望の中で彼に更なる追い打ちをかける。トミーは父親のマルコムが人工地震を発生させスターリングシティを壊滅させようとしている事を知ってしまうのだ。恋人を失い、親友を失い、父親までもが犯罪者。どこまでトミーを追い詰めれば気が済むのだろう。そして最後、彼は瓦礫の下敷きになったローレルを救出し、命を落とす。アメコミファンからは父親の跡を継いでダークアーチャーになるとまで予想されていたのに…。ラスト5話、とにかくトミーに同情を禁じ得ない物語だった。
ここまでのことをやられてトミー・マーリンを嫌いになることがあるだろうか。嫉妬に塗れてしまった上に信頼している人間から次々に裏切られていき、しかしそれも自分が無力なせいだと気付いてしまっている虚しさ。正直序盤は必要かどうかも分からないキャラだったが、終盤で大化けする。だからこそオリバーはトミーに謝る必要がある。もうシーズン2の内容を忘れてしまっているのでトミーの死がスターリングシティにどれだけのことをもたらすのかは憶えていないが…。
シーズン1の面白くなさは、明らかに続編ありきで作られていることも関係しているのだろう。本来なら少なくとも各シーズンで物語に区切りを付けるべきなのに、ロイの登場やデッドショットとディグルの因縁など、結局次に持ち越したままで、そもそも今シーズンで解決し切らないんだろうなという要素が多すぎるせいでノイズになってしまっていた。もちろん続シーズンに向けて仕込みをすることは悪くないし、次のシーズンで後出し的に色々新規設定や新規キャラを出されるよりはマシなのだけれど、それならばシーズン1のゴールを明確にしてほしかったと思う。最初はリストの名前を全て消すというのがゴールだと思っていたのだが、段々リストの進捗は語られなくなり、そのうちに「リストの名前を消すだけじゃ意味がない。根本から悪を倒さないと」みたいなことをオリバー自身が言い出してしまった。マルコム・マーリンとオリバーの因縁もあまり描かれず、実力的にまあ彼を倒すのが現時点で最高の盛り上がりだよな…くらいの妥協点にしか見えなかったのが残念。MCUでもヴィランの印象が薄い問題がよく話題に上がるが、それだけでもクリアしてくれれば傑作だったのになあと。
正直、アクションシーン以外はほとんど面白くないと思うし、アメコミ作品全盛期でなかったらここまで続くのは厳しかったんじゃないかなと思う出来だった。しかしアローバースが本領を発揮するのは複数のドラマが始まってから。もしシーズン1を観たばかりの人がこのブログに辿り着いていたら、もう少しだけ付き合ってあげてほしい。何より、ラスト5話でこんなにもトミーの死を劇的に描けるポテンシャルを持つ作品なのだ。ボルテージが上がるのに時間がかかっているだけなのである。多分。
お騒がせセレブとダークヒーローの二重生活としての面白さもあんまりなかった(バレてもあんまりヤバいことにならないので…)のは残念だが、21話なんかのオリバー、ディグル、フェリシティでの共同作戦なんかは非常に楽しく、こういう3人がプロフェッショナルとして活躍するだけのアクション回がもっとあればなあと思ってしまった。スパイチーム的なエピソードのほうが自分的には好み。だからこそもうギスギスしないでくれ、チームアロー!クイーン家!
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